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60点だった俺のカンスト人生〜底辺レベル1のアラサー社畜、超難関ゲートに落ちて神竜を簒奪(オーバーライト)したら世界最強になっていた〜  作者: kiro


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隠しボス【忘却の霊神】との死闘

古代の防衛魔像ルーン・ゴーレムの群れを突破し、俺たちは『幻影書庫』の最深部へと到達した。


そこは、これまでとは空気が違っていた。

天井知らずの巨大な書架が途切れ、現れたのは、直径数百メートルはある巨大な円形の祭壇だった。床には複雑な魔法陣が刻まれ、祭壇の中央には、ぼんやりと青白く発光する「何か」が浮かんでいる。


「……静かすぎるな」


俺が足を踏み入れた瞬間。

祭壇の中央に浮かんでいた光が、爆発的に膨れ上がった。


『ウゥゥゥゥゥゥゥゥン……』


耳鳴りのような低い唸り声と共に、光が渦を巻き、やがて一つの巨大な人型を形成していく。

それは、実体を持たない、揺らめく半透明の幽霊のような巨人だった。全身が青白い魔力の奔流で構成されており、足はなく、宙に浮いている。


俺の視界に、システムウィンドウが警告色で表示された。


【エネミー:忘却の霊神オブリビオン・スペクター

【レベル:3500(神話級・特異個体)】

【特性:物理攻撃無効、純魔力霊体】


「レベル3500……」


その異常な数値を見て、俺は思わずため息をついた。


探索者ギルドが定めるダンジョンの等級には、明確な『推奨レベル』と『ボスの出現レンジ』の基準が存在する。


中堅が挑むD級やC級でレベル100〜300。国家の主力部隊が総出で挑むA級ダンジョンでも、最深部のボスはレベル500〜800程度に収まる。


そして、数年に一度発生するかどうかの最高難易度【S級ダンジョン】。ここでようやく、人類の限界点であるレベル999に到達した『日本のS級探索者8名』の出番となる。


つまり、ギルドの観測履歴において、レベル1000以上のバケモノは公式には存在しない。それは「災厄級」や「神話級」などと呼ばれ、あくまで机上の空論、あるいは伝説上の推測レベルとして設定されているだけだった。


「存在しないはずのバグ(レベル3500)が、当たり前のように鎮座してるわけだ」

俺が呆れていると、背後のしずくがガタガタと震え出した。


「あ、朝倉さん……! あれ、実体がありません! 純粋な魔力の塊のお化けです!」


『――排除スル』


霊神が腕を振り上げると、その周囲に無数の魔法陣が展開された。


ドォォォォォンッ!!


放たれたのは、視界を埋め尽くすほどの極太レーザーの豪雨。一発の威力が、自衛隊の戦車大隊の総火力を軽く上回っている。 


「きゃぁぁぁっ!?」


「チッ、派手な花火だな!」


俺はしずくを庇うように前に立ち、迫り来るレーザーの雨を、素手で適当に払いのけた。

パァン! パァン! と軽い音がして、俺の手に当たった魔法が霧散する。レベル差がありすぎるせいで、俺の魔法防御を貫通できないのだ。


「よし、守りは問題ない。クロ、雨宮さんを頼むぞ!」


『キュッ!』


クロがしずくの周囲に影のドームを展開するのを見届け、俺は地面を蹴った。


ドォンッ!!


音速を超え、一瞬で霊神の懐に潜り込む。


「まずはご挨拶だ! 『営業パンチ』!!」


俺は挨拶代わりの軽いジャブを、霊神の腹部に叩き込んだ。

――スカッ。


「……あ?」


俺の拳は、何の抵抗もなく霊神の体をすり抜けた。

まるで煙を殴ったような感触。衝撃波が背後の壁を吹き飛ばしたが、霊神自身は揺らめいただけで、すぐに元の形に戻ってしまう。


【物理ダメージ:0】


「マジかよ。本当に効かねぇのか」


俺が呆気に取られている隙に、霊神の反撃が来る。

至近距離からの魔力爆発。俺は吹き飛ばされ、数回転して着地した。ダメージはないが、スーツに少し焦げ跡がつく。


「やっかいだな……。おい、エース! 出番だ! あいつの動きを止めろ!」


「は、はいっ! いきます! 『エンチャント・ブースト』!!」


しずくが杖を振り、黄金の奔流を霊神に浴びせる。


『ウ、オォォォォ……ッ!?』

霊神の動きがピタリと止まった。体内の魔力が許容量を超えて暴走し、激しく明滅を繰り返している。完全なフリーズ状態だ。


「よし、ナイスデバフ!」


「で、でも朝倉さん! あいつ、実体(肉体)がないから、内側から破裂してくれません! ただ魔力が暴走して固まってるだけです!」


しずくの言う通りだ。魔法の暴走で自壊させるには「壊れるべき器」が必要だが、こいつは純粋なエネルギー体。ジリ貧になれば、魔力切れを起こすしずくの方が先に倒れてしまう。


「物理も効かない、デバフでも死なない。……参ったな。残業時間が長引いちまう」


俺はネクタイを緩め、大きく息を吐いた。

このままじゃ埒が明かない。


「……仕方ねぇ。ちょっと『荒療治』でいくか」


俺は腰を落とし、右拳を引いて構えた。

体内の竜の心臓がドクンと跳ねる。全身の筋肉がきしみを上げて悲鳴を上げる。


「物理が通じないなら、物理法則(概念)ごとぶっ壊すまでだ」


俺は【EX:概念破壊】のスキルを、右拳の風圧に全振りした。


狙うのは霊神ではない。霊神が存在している「空間そのもの」だ。


「壊れろ。『空間破砕拳』!!!」


俺が拳を突き出した、その瞬間。


バリィィィィィィィィィンッ!!!!!


俺の拳の周囲の空間に、蜘蛛の巣状の亀裂が走った。


ガラスが割れるような轟音と共に、祭壇周辺の空間そのものが砕け散り、黒い虚無の穴が口を開ける。


『ガ、ァァァァァァァァ……!?』


霊神は抵抗する間もなかった。

砕け散った空間の奔流に巻き込まれ、その純粋な魔力体はズタズタに引き裂かれ、虚無の彼方へと吸い込まれて消滅した。


凄まじい衝撃波が祭壇を粉砕し、書庫全体を揺るがす大地震を引き起こす。


「はぁ……はぁ……。やったか?」


俺が土煙の中で立ち上がると、クロの影バリアに守られたしずくが、腰を抜かして震えていた。


「あ、朝倉さん……今、何を……? 空間が、割れて……」


「ちょっと本気で空間を殴ってみた。……だが、代償がデカすぎたな」


俺は自分の右腕を見て、がっくりと肩を落とした。

空間を砕くほどの負荷と摩擦熱に、ただの布地が耐えられるはずもなかった。

お気に入りのツーパンツスーツのジャケットは、右袖が肩口から完全に吹き飛び、見るも無惨な半袖状態になっていた。中のワイシャツもボロボロだ。


「ああぁぁ……! 青山で買ったストレッチ素材のやつが! まだローン残ってるのに!!」


俺は頭を抱えて叫んだ。

物理無効の敵は倒せた。だが、その代償として、俺の社会人としての身だしなみが死んだ。 


「やっぱりダメだ……。素手のままじゃ、俺の力に服がついてこれない。俺の拳をコーティングして保護できるような、都合のいい『魔法』がなきゃ、この先やっていけねぇ……!」


俺が嘆いていると、粉々になった祭壇の瓦礫の中から、何かが黒く光っているのが見えた。


それは、霊神が守護していたと思われる、漆黒の装丁が施された一冊の古びた書物だった。


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