お母さん、愛の物語を思い出した
小学5年生の三嗣のお母さんは最近重い病気にかかり、死の淵にいました。
とうとう今夜が山だと言われた夜、三嗣はお母さんの手を握っていました。
少し苦しそうにして看護婦さんを呼んだあと、お母さんは少し楽になってきたようで三嗣ににっこり笑って口を開きました。
そうだ愛の話を、思い出した。とお母さんが言います。
それはお母さんが小さい頃に読んだ、こんなお話よ。
いつも豚さんの笑顔が好きなお空がありました。
あるとき、とっても豚さんが困って、泣いていました。
そうしたら、それを見ていたお空が、自分に虹をかけたんです。
これで泣き止んでね。
いつも僕は君の笑顔で元気になって、晴れることができてるんだ。
そうお空は豚さんに言いました。
2人はそれからとても仲良しになりました。
それから長い時間が経って、豚さんは次第におじいさんになっていきました。
とうとう最後のとき、豚さんはお空に言います。
僕、死ぬのは悲しいけど、元気だった頃の僕の笑顔を忘れないでね。そうしてずっと元気にいて、みんなも僕みたいに幸せにしてあげてね。
そう言って豚さんは最後に一度にっこりと笑ってから、死んでしまいました。
空さんはそれからもちゃんと晴れて、みんなに時々虹を見せて、みんなを幸せにしていったそうです。
まるで私たちみたいでしょう?豚さんはお母さん、お空は三嗣。
豚さんはお空さんに笑顔にしてもらってから、ずっと仲良し。
お空さんはこれからも優しくて、きっと豚さんが死んでも、その笑顔を忘れずに生きていく。
2人が仲良しで愛し合っていたから、お空さんは豚さんが死んでも、前みたいにちゃんと晴れることができる。
そんなお話を、昔読んだわ。
お母さんは少し涙声でした。
そんな風に、お空さんみたいに、三嗣も優しいまま元気に生きてね。
そう言ってお母さんはにっこり笑ったあと、
ありがとうと言い残して、この世を去ったということです。




