純情
ただ愛されたかった。それだけの事なのに、何度も繰り返されるあの言葉。
「……それだったら、最初から出会わなければ良かった。」
静かな独りの夜で呟いた。
犬養。短めの黒髪で、少し毛先がくるくるしてる。普段の服装は制服の上からパーカーを着ていて、好みは食べることと自分のことが好きな人。誰よりも秘密が多いが、この物語の主人公である。
それは会話の一つから始まった。クラスの親睦会で人見知りな友達をどうにか皆と馴染ませようとしていた。その後、帰りのことだった。
「もー、マジ勘弁。俺、お前いねぇとムリだわ。あの場本当キツい。」
「はァ〜〜??あんだけハーレム食らっといて良く言えんなお前。流石に羨ましかったんだけど。」
思わず溜め息が出た。普通にイケメンである彼は、着いた途端に数多の女子に囲まれていた。何とか蚊帳の外にならないように自分も必死だった。
親友の名前は桜。黒いサラサラの髪が羨ましい、右目の下にほくろがある男の子。如何にもモテ男子って感じの見た目。
「人前で話すとかムリ。次も着いてきて。」
「いや大好きかよ。そんな緊張する?」
「は?すきじゃないし。仕方ないだろ。」
「…ふーん、すきじゃないんだ。じゃあ行かない。」
「え。」
「すきじゃないんでしょ。だったら行ってあげない。」
「うそ、冗談。すきだよだいすき。ね、来てよ。」
流石にこんなイケメンにこんなこと言われてしまったら断る訳にもいかない。
「仕方ないなぁ。」なんて笑いながら、いつものように揶揄っていた。
少し歩いたあと、桜は突然言い放った。
「なぁ。…………だいすきって言ったから、付き合ってよ。」
流石の自分も目が飛び出るかと思うほどびっくり仰天。聞き間違いか、ただの冗談か。
「…付き合っても楽しくないと思うよ。」
顔を逸らした。何でも本気にしてしまう性格だからこそ、それがウソだったと知るのが怖かった。
「そんなことない。」「ちゃんとすき。」「かわいいよ。」投げ掛けてくれる言葉はどれも嬉しくて心が踊った。でも、傷付くのが何よりも怖い。本気で言ってくれてるのかもしれない、なんて希望が裏切られた時にどれだけの絶望を与えてくれるのか。想像ができないほどに。
「恋人が欲しいのは分かるけどな。周りの奴らも皆言ってるし。そーいやあいつら付き合ってたの知ってる!?」
全力で話を逸らした。これが今の自分にできる精一杯だった。桜は何か言いたげにしていたけれど、それも気付かないフリをした。




