第16話「主人公」
ホテルに帰ると、めずらしくフロントカウンターに老人がいた。支配人か従業員か知らないが、結局この3日間、彼以外にホテルで働く人の姿を見なかった。大体その老人の格好もチェックのシャツに綿のパンツという、職務に対して似つかわしいとは言えないものだ。きっと本業ではないか、もしくは引退した人を雇っているのだろう。 彼は僕を見ると、すぐにカウンターから出てきた。
「えーと、簾藤さん?」
「はい」 宿泊客はたった四人なのに、憶えてくれていないのか。
「明日川のお嬢さんから伝言を預かっています。はい、これ」
差し出されたものは、パーティの招待状が入っていそうな赤紫色の花柄模様がプリントされた洋形封筒で、″簾藤様へ″ と(おそらく小恋ちゃんの)直筆で書かれていた。
「あ…はい、ありがとうございます」
平坦な口調で礼を言って、なんだろう、という表情で受け取っておきながら、僕はすぐさま階段を駆け上がり、スムースにカードキーを財布から出して、部屋に入った。心臓の鼓動が聞こえる。一気に3階まで駆けあがったせいもあるが、大部分は緊張のせいだ。なにが書かれてあるかは大体予想できる。おそらく単なる社交辞令の言葉が並べられているだろう。だが、僕は一縷の望みを抱いた。もしも小恋ちゃんがもう一度僕と話がしたい、と言ってくれたなら…。
そんな女々しい期待は、中身の手紙にざっと(ほんの数秒)目を通しただけで裏切られた。紙は一枚だけ、昨晩小恋ちゃんが最後に僕に謝罪した内容が、少し言葉を変えて文に起こされているだけで、あとは明日の船の出港時間(午前11時)、フェリーは小型のものになる事が記されていた。手紙はプリントアウトされたものではなく、宛名と同じ筆跡…おそらく小恋ちゃんの直筆だと思う。それは紛れもなく彼女の誠意が込められたものだったのだが…。
そりゃあまあ…そうだろう。裏切られたなんて、被害者意識が強いだけの妄言だ。
僕はベッドに横たわった。疲れた…このまま眠ったら、もしかしたら朝まで起きないかもしれない。そして小恋ちゃんだけでなく、雲妻や綾里さん、珠ちゃんにもこれ以上会わないまま帰る事になるかも知れない。それでもいいのかも…別れ際に「お元気で、移住をがんばってください」なんて言うのも変だし。
いや、それは本心じゃない。僕も移住したい、とまでは正直思っていないけれど、カンペンに言ったように、このまま帰ってしまって、すんなり記憶から消すなんてできるはずない。一時の、楽しかった思い出にすることもできない。この…普通では絶対にありえなかった体験、そして出会いの数々を、臆病を原因にして自ら封印してしまっては、僕はきっと後悔する。この先うだつの上がらないサラリーマン生活を送り続けて、ふと思い出すに違いない。あの時、もしもあの島に残る事を選択していたら、人生はもっと…。
いや? 待てよ。そんな前向きな考え方が常に正しいとは限らない。もしも数年経って、本当にこの島の正体が明るみになって、資源をめぐって政府が乗り込んできたり、町長や島民が脱税とかで逮捕されたり、キロメの取り合いで世界を巻き込むような争いが起きたりして、もしも雲妻や綾里さん、珠ちゃんが移住していたとしたら、そして小恋ちゃんやカンペンに対して、僕はどう思うのだろうか…。
ほんの3日間滞在しただけなんだけれど、皆いい人ばかりじゃないだろうけれど…町長、レストランの老夫婦、鷹美さん、サドル、珠ちゃんを探してくれた島民達、お年寄りたち、他にも…メェメェ様、クゥクゥ、あの漁師たちだって…。僕はどう思うのだろう? 巻き込まれずに済んだ、助かった、って思うのか? 思ってしまうのか? そんな人間でいいのか? そんな…脇役どころか、端役キャラでいいのか?
僕はベッドから起き上がった。
とにかく…このまま夜を迎えてしまってはもう悩むこともできなくなる。もしもまだ延泊をお願いできるとしたら…もう遅いかも知れないが、それでも早いほうがいいのは当然だ。まず…本土に帰ったらやらなければならない事、転勤に伴う転出入の手続きだが…これってオンラインでできるんじゃないかな? それなら転勤後でもできるだろうし…そうだ、それなら引っ越しの日まで引き延ばす事ができる。もう少し考える時間が得られるというわけだ。さっそく調べてみよう。ん? あれ? スマホどこにやった? ……ああ、そうか、ないんだった。
僕は部屋から出て、急いで1階へ降りた。フロントカウンターにはもういなかったが、「すみません!」と大声を出すと、隣にある小部屋のドアが開いて、老人がのんびりと出てきてくれた。
「はいはい、なんでしょう?」
「あの、インターネットが使える所ってどこですか?」
「ああ、町役場なら使わせてもらえますよ」
また戻るのか…。
「あの、タクシーって…ないですよね」
「あ~島にタクシーはないなあ。でも、今日はバスが出せるはず。 電話してみましょうか?」
「電話?」 …今日は出せる? 毎日は走っていないという意味か?
「乗りたいときは事前に連絡するんですよ。なかなか運転手も時間の空きが少なくて、連絡なしだと来てくれない」
…それは路線バスとは言わないよ。
「お願いします」
「はいはい」と言って、老人は小部屋に戻った。
バスはすぐ迎えに来てくれることになった。しかし、実際にニアファンタジーホテル前に到着したのは、それからおよそ40分が経過した後だった。バスはホテルや葬祭場の送迎に使用されるような20人乗り程度のマイクロタイプで、僕の他に乗客はおらず、運転手は普段着姿の、おそらく50を超えた、スーパーマリオのようなひげを生やしたおじさんだった。多分…大型免許は持っていても、二種免許は持っていない気がした。
「貸し切りだに」と笑顔で言う様子に嫌味は感じなかったが、それでも申し訳なく思った。古そうで平凡な白い車体には、運航会社名等はプリントされておらず、行き先を表示する電光掲示板も装備されていなかった。おそらく路線バスと呼べるものは、実はまだ整備されていないのだ。だからあの娘が…カンペンがオンボロの自転車を必死にこいで、補ってあげているのだ。
島は儲かっているのなら、彼女に新しい自転車を買ってあげればいいじゃないか、電動のやつを…。
玄関口にはクラシックな洋風建築のデザインに似つかわしくない(いや、却って明治、大正時代のような趣はあるけれど…)炭のように黒い木製の門標が掲げられていて、銀文字で ″二朱町役所″ と書かれている。ずいぶん古そうで、大昔からのものをずっと使用しているのだろうと思われた。
見かけはアンティーク風の木製扉だが、実はスライド式の自動ドアが開いて、僕は建物の中に入った。雲妻が言った通り、内部は近代的な、いかにも役所と言うような白壁とタイルの床に囲まれたオーソドックスなオフィスだった。しかし受付カウンターに人の姿はなく、パーテーションで区切られた奥にも人気が感じられなかった。
「すみませーん!」と、2度呼びかけてみたが応答はなかった。いくら田舎だからって、仮にも役所がこんな不用心でいいのか? 怒りを含んだ感情が湧いたところで、ようやく奥から50代と見られる、ほうれい線がくっきり出ている顔の女性が出てきた。
「はい?」
「あの、インターネットを使いたいんですけれど…」
「はあ?」
はあ、って… この人も本業じゃないのか? 白いブラウスにグレーのベスト、黒のパンツ、いかにもなオフィスルックだし…まさか役所勤めで兼業はないだろう。いや、この島はある程度治外法権か…。
「あの…僕は観光客でして、スマホを預けてしまっているのですが、ちょっと調べたいことがありまして…」
「ああ」
女性は気づいたように僕の顔を確かめた。まさか、島中の人が僕の事を知っているのか?
「観光客の人でしたか…。 えっと、インターネット?」
「はい」
「ごめんなさい、今ちょっと担当の者がいなくて…」
「担当? いやその、ちょっと調べ物がしたいだけなんですけれど」
「それがね、担当者同席の下でないと使えない、という決まりがありまして…」
「別にその、島の事を外部に発信しようとか、そういう事を考えているわけじゃないんですが…」
女性は一瞬難しい顔をしたが、すぐに元に戻した。
「何を調べるの? おばちゃんが代わりに調べておく」
「いえその…」 なんでこの人に転出入の手続きがネットでできるか調べてもらわなきゃならないんだ。理由を聞かれたりしたらめんどくさい。しかし…どうやら普通に使わせてもらえないようだ。もしも僕が明日帰ると伝わっているならば、警戒されているのかも知れないし…。
「担当の方はいつ戻られるのでしょうか?」
「今日はもう5時を過ぎているから、戻らないと思う」
「そうですか…あの、電話はできるのでしょうか?」 電話で聞いてみようか…。
「島内ならどこでも繋がるんだけれど、島外の場合は担当者が…」
「はい、わかりました」と言って遮った。まるで監獄島だな…。
「ちなみに…」
「ん?」
「この二朱町に転入する時は、ネットで手続きできるんですか?」
「ええ、できますよ」
…できるんかい。
いろいろと歪な町だな…。僕はいつしか、この島に散在している様々な不備を気にするようになっていた。中でもこの連絡網の制限は、移住者を募るにあたってかなりの足枷になると思う。普通の人にとって、ネットが自由に使えない、本土と気軽に連絡を取れない、というのはとても許容できるものではない。ネット社会を心底嫌うような人や、笹倉やあの柄の悪い漁師たちのような問題を抱えた、家族や友人との係わりを断てる人、断ちたいと望む人でないと無理だろう。…綾里さんもそうなのだろうか。僕は…なぜ誘われたのだろうか。都会の生活に疲れている、なんて思われたのだろうか(当たっているけれど) もしかして、左遷されたことも調べられていたんじゃ… 雲妻は? あの専門学校の二人は?………考え過ぎか。
僕が諦めを示すと、女性は「ごめんなさいね」とだけ言って、さっさと奥に戻ってしまった。窓口は僕を残してまた無人になった。まったく不用心だ。
どうする? この島でもできるくらいだから、どこだってネットでの転出入手続きくらいできるだろう。しかし、よく考えるとその他にも色々と準備しなければならない事があったし、休暇中とはいえ、平日に一切会社と連絡が取れないままになるというのも心配だ。(僕は凡人だな、社畜根性が染みついている)…やはり、帰るべきなのだろうか。
日が暮れかかっていた。バスが役所の前で待っててくれているし、もうホテルに帰るしかない。ホテルに着いたら、老人に頼んで小恋ちゃんに電話をかけてもらおうか。どう話せばいい? それを帰る道中でじっくり考えよう、と思ったのだが、どうやら無理だ。
「簾藤さん、やはりあなたでしたか」
バスに近づいたところで、雲妻が僕を呼び止めた。
「雲妻さん、どうしてここに? もしかして今まであいつらと一緒にいたんですか?」
「ええ、色々と島のお話を聞く事ができました。簾藤さんこそ、どうしてここに?」
雲妻は少し飲んでいるようだが、なぜかいつもより落ち着いた様子に見えた。
僕は正直に、もうしばらく島に滞在したい気持ちが芽生えている事を説明した。研究所の前で雲妻と会話した内容が、少なからず僕の気持ちに影響を与えていたからだ。雲妻は僕の心境の変化に喜んで、小恋ちゃんに相談する事を強く勧めてくれた。そして役所を訪れた理由…転出入の手続きは問題ないとしても、予定していた日程を超えて職場や家族との連絡を絶つ事に不安を感じている、と説明すると、雲妻はバスの運転手にもうしばらく待ってくれるようお願いした。もしも他の利用客から連絡があった場合は、15分くらいしか待てないという返答があったが(もはやタクシーだな)、雲妻は「15分あれば十分です」と答えて、僕を連れて役所に入った。
「もう、別にいいですよ」
「離れて暮らしているとはいえ、ご両親にはことわりを入れておくべきでしょう。お仕事の方もメールの確認をしておけば、いくらか安心なのでは?」
「そりゃそうですが、仕事のメールは自分のスマホがないと…」
「あるんですよ。私たちの預けたスマホは、この役所に保管されています」
「え? …なぜそんな事を知っているんです?」
「しっ」
雲妻は口の前に人差し指を立てた。どうして?
雲妻は音を立てずに素早く歩いて、なんら躊躇することなく、無人の窓口の内側に入った。
「何をしてるんです?」 僕は思わず内緒話をするような小さな声で話したが、雲妻は「まったく、甘すぎます」と僕より少し大きな声で言って、なんら意に介さない様子で足を進めた。長身の逞しい体が、机や椅子、棚や複合機、ごみ箱等に少しも動きを遮られる事なく、一切の物音を立てずに、ものの数秒で中央を超えた。
僕はその場で立ち尽くしていた。ただパーテーションの向こうにさっきの中年女性がいるのではないか、と不安に思う事しかできなかった。
雲妻はいくつかのパーテーションの隙間から奥を覗いて確認すると、誰もいなかったのか、さっと中に入って、2分ほど経ってから戻って来た。そして僕の背を押して、玄関に向かうよう促した。外に出るまで、僕は生きた心地がしなかった。
雲妻は僕にスマホを渡した。確かに…僕のスマホだった。
「この役所周辺なら、多少電波状況は悪いですが、ネットも繋がります。回線とパスワードをお教えしますので…」
「なぜ知っているんですか?」僕はまだ小声で話した。
「わたしは…昼間に一度こちらに来たんですよ。ほら、なにせ妻帯者ですから、いくら出張と偽っていても、3日間も連絡を取らないでいれば、妻に要らぬ疑いをもたれてしまいます。その際に私たちの端末がここにある事を知って、置いてある場所を確認しておりました」
「スマホを使わせてもらえたんですか?」
「やはり自分のものからメールを送らなければ、それも疑いに繋がりますからね。お伝えしております通り、妻と私は通話するほどの仲ではありませんし…残念ながら。ええ、使用する時に、簾藤さんがおっしゃったように傍に監視者がいましたけれど…」
「そう…ですか」
一応筋は通っているようだが、やけに説明調で、たどたどしい…雲妻らしくない。それに、あんなプロの空き巣狙いのような素早い動き…スマホを置いてあるところに、鍵はかかっていなかったのか?
「まあ細かい事はお気になさらず、ささ、早くご確認ください。また返しに戻らなくてはなりませんから」
「え、ええ」
…こいつ、一体何者なんだ?
両親に電話して、旅行を延長する旨ともうしばらくの間携帯が繋がりにくくなる事を伝え、続けて仕事関連のメールを確認した。気になる内容があったのだが、とりあえず横に置いておく。帰りの車中で僕の思考を占領していたものは、3人のメェメェ様でもカンペンでも、この後小恋ちゃんに電話する内容についてでもなく、隣に座る変人の事であった。
僕らはスペースが広い最後部の座席に座って、さらに小声で話していた。古いマイクロバスはエンジン音も大きく、また音楽(古いポップス)を流していたので、運転手に僕たちの会話は聞こえなかっただろう。
普通じゃない奴とは思っていたが、やはり普通じゃなかった。はじめからスマホを盗むつもりで、こいつは役所に入った。そしてあっという間に取ってきて、あっという間に返してきた。
町役場の受付フロアに監視カメラは設置されていない、そもそも、それほど大事なものは保管されていない、と雲妻は言った。あの二朱町役所はカモフラージュであり、二朱島の実態…経済の正確な数字、島民の情報管理、水産や農畜産物の正確な生産量、生態系の調査データ、エネルギー産業、その他インフラのシステム等一切の情報は、あの建物内には保管されていない…らしい。
なぜそんな事を知っている? なぜそんな事を調べているんだ? 僕のマンガ脳が再び活動を始めていた。
「わたしの事を怪しんでおられますね? これまでと違った意味で…」
僕は無言だったが、それが返答になっていた。
「簾藤さんもまた島に残られるなら、いずれお話ししなければなりませんからね。まだ短いお付き合いですが…勝手ながらわたしはあなたを親しい友人と思っておりますので、ばれるよりもばらす方を選びたくなりました」
僕も…いい人だと思っていたよ。
「おそらく今予想していらっしゃることが正解だと思います。おことわりしておきますが、公務員だというのは一応本当です。かなり非公式な部分がございますが…。それにオタクというのも、職場の鼻つまみ者というのも、妻帯者というのも、妻に忌み嫌われているというのも本当ですよ」
あなたは… マンガ脳が出した答えを言おうとして、僕は息を詰まらせた。
とても ″のんきな非日常ラブコメ” にはなりそうにない。
「すみません。明日お帰りになられたなら、騙した事にはならない、と考えていました。 しかし…この二朱島に、マエマエ様やクゥクゥも含めた島民の方々に抱いているわたしの感情は、簾藤さんとそう違いはないと思っております。それと同時に、大きく違う所もあると思います。なので、大変悩んでおります。…そうですね、どう説明すればよろしいでしょうか…」
雲妻はしばらく考え込んでいたように思えた。めずらしく(本当の彼を知らないが)真面目な、強張った表情をしていた。
「わたしは、この物語の悪役…に配置されるであろう ‶島の資源を狙うフィクサーの手先” という役柄に甘んじるつもりはございません。ですから、今しばらくはわたしとの友情を保ち続けて頂けませんか? どうかお願いします」
雲妻は座ったまま頭を下げたが、僕はやはり言葉を返せず、沈黙を続けた。
午前に彼と話した内容を思い出した。確か… ‶自分が信じる道理に従って、戦う覚悟を持ちたい” と語っていた。ただ者じゃないとは思っていたが、単にアニメや漫画の見過ぎで頭がおかしくなった奴とも思っていた。どうやら…本当にアニメや漫画のキャラみたいな奴らしい。しかし…この時の彼の言葉は…真剣だったと思う。
雲妻、小恋ちゃん、町長、サドルやカンペン、きっと笹倉や綾里さんも…皆それぞれが責務を負っていて、それを果たすべく、できる事をやろうと、できそうにない事にも挑もうとしているように思った。平凡な僕は、できる事しかやらない僕は、果たして彼らについて行けるのだろうか、僕はどういう立ち位置を得るのだろうか…。とても主役なんて張れそうにない。さっきまで著しく勢力を失っていたはずの ‟おとなしく本土に帰ろう派“ が、再び復興の兆しを見せ始めていた。なんて優柔不断なんだ、と自分でも呆れるが、本心なのだからどうしようもない。
フロントガラスから西日が差し込んで、僕と雲妻の顔上半分を赤く照らした。心の迷いを照らされているような気分になった。雲妻もまた、眩しそうに顔をしかめ、前座席の背もたれの陰に顔を隠した。
雲妻は…僕よりもずっと優秀な人間なのだろう。頭脳も体力も、そして度胸も。警官なのか軍人なのか、それともスパイなのか知らないが、特殊な、厳しい教育と訓練を受けてきたのかも知れない。そしてオタクで、異世界にあこがれていて、アニメや漫画のキャラクターになりたがっている…いかれたバカなんだろう。 それでも… ‶悩んでいる” ‶恐れている” と語った事もまた、本心なんだと思った。
…どうしよう。帰りたい、という気持ちもまだ強い。でも雲妻と、小恋ちゃんと、綾里さん、珠ちゃん、町長…カンペン、それ以外にも、皆と…もっと話をしてみたい、もっと知り合いたい、そう思う気持ちもかなり強い。
とりあえず小恋ちゃんに電話しよう。そして、もしも彼女が気持ちよく延泊を認めてくれたなら、可能なかぎり島の事を知ろう。
なんか男らしくないが、主人公らしくないが…どうかカンペンしてください。
次回、第17話「二朱島上空大追跡 開幕まで」