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【本編完結】異世界転移したので、まずはそれっぽい名前を名乗るところから始めようと思います。  作者: いか人参
番外編〜ハッピーエンドのその先〜

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その後の話⑦



「ああああっ!!!早く迎えに行かないとー!!!」


今日は1日ゆっくりしようと、遅めの朝食を終えて庭園のガゼボで穏やかな風に当たっていたアレスとそんな彼女に寄り添うように隣にいるテト、の予定のはずが、アレスは椅子に座って僅か10秒ほどで大声と共に勢い良く立ち上がった。


一人で焦りまくっているアレスを見たテトは、彼女の腕をそっと引き寄せ、とりあえず自分の膝の上に座らせた。



「何か困り事か?」


テトは、アレスの身体に腕を回して彼女の髪を撫でながら尋ねた。

彼女のすぐ側にいる今、テトには何も恐れることがないらしい。心配そうな表情をしながらも、どこか余裕の空気を醸し出している。



「ジュリアさんのこと迎えに行かなきゃ!約束してて。なのに、私勝手に王宮から出て来ちゃったし戻りも遅くなったし…こんな大切なことを忘れるなんて私……ああもう……」


「ああ、彼女なら大丈夫だ。ダミが避難先の王宮から連れて帰ったと聞いている。」


「は……ダミ…?今なんて……??」


テトの言葉を聞いたアレスは目の前が真っ暗になった。

自分が忘れていたせいで大切なジュリアがダミアンの手に落ちてしまった、勝手にそう捉えてしまったのだ。



「いや、私の言い方が悪かったな。もちろん、ジュリアの合意の上だ。ダミは強引なやつだが、無理強いするような奴ではないからな。」


「う、そ……」


「昨日付けで結婚したと報せがあった。今朝届いていた手紙がそれだ。」


「は!?け、けけ、結婚っ!!?な、なんという早技……いや本人達が幸せなら良いんだけど、、うーん…でもやっぱり心配だから近いうちにジュリアさんに話を聞きに行こうって、あれ……」


「どうした?」


「へ…私どうしてテトの上に座ってるの………」


冷静になったアレスは、自分の身体を四方八方から包み込む温かい感触と耳のすぐ側で聞こえるテトの声で、ようやく自分の現状を認識した。


彼女にとってそれは、あまりにあり得ない状況で、恥ずかしさよりも何よりも真っ先に疑問が浮かぶ。



「それは、私たちが互いに想いあっているからだな。もっとも、出来るだけ君に触れていたいというのが行動の根源にあるが。」


腰に回す腕の力を強め、アレスのうなじに顔をうずめて深呼吸をしてくるテト。



「きゃあああああああああああっ」


甘さ全開のテトにまだまだ慣れることのないアレスは、返事の代わりに大絶叫を返し、覚悟なく理由を尋ねてしまったことをひどく後悔していた。





***




ようやくレジトリス家の邸に戻って来たと思ったら、朝っぱらからジュリアと結婚したと宣う弟にフィオナは頭を抱えていた。


無事な姿を見て思い切り抱き締めてやろうと玄関先で待ち構えていたのに、そんな気持ちは微塵も無くなってしまった。


そんな彼女をよそに、ダミはああそうだと言いながら一枚の封筒を差し出して来た。



「姉さん、これ。」


「貴方が姉さん呼びするなんて嫌な予感しかしないのだけど…」


フィオナは嫌そうな顔をしながら差し出された封筒を受け取った。

裏返しにして差出人の名を確認した瞬間、全身から一気に血の気が引いた。



「えっ…な、なによこれ………」


彼女の震える手で掴んでいる封筒には、直筆で『タテロット・フリーデン』の名と王家の紋章の透かしが入っている。


正真正銘、このフリーデン王国の現王太子からの手紙であった。



「俺はちゃんと渡したからな。文句があるなら本人に言えよ。あとは宜しく。」


「は!?ちょっと!待ちなさいっ!!


玄関先でフィオナに手紙を渡したダミは、大役を終えたとばかりに晴れやかな顔で手を振って来た。

そしてそのまま軽い足取りで自室へと逃げて行った。



「厄介ごとの匂いしかしないわ……」


王太子からの手紙を読まずに破棄など出来るわけがなく、フィオナは渋々と手紙を読むことにした。


が、覚悟を決めるまでにかなりの時間を要し、読み始めたのは日没間近となった頃であった。






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