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【本編完結】異世界転移したので、まずはそれっぽい名前を名乗るところから始めようと思います。  作者: いか人参
本編

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フィオナ先生



フリーデン王国は、建国してから1200年ほどが経過している。


フリーデンとは初代国王の名であり、彼は大魔法使いであった。魔獣に怯えて暮らす人々の為に、結界で囲った地域を作り、それが国という単位まで広がりを見せた。

それがフリーデン王国の始まりと言われている。



フリーデンの教えや彼の血によって、王国には魔法使いや魔力持ちの人間が急激に増加した。だがそれは、僅か1000年ほどで衰退期に入り、今では魔力持ちですら珍しく、魔法使いは滅多に生まれない絶滅危惧種となってしまった。


その要因は恐らく、周辺諸国を食い荒らした魔獣が力をつけ、空気中の魔素を激しく消費してしまったためだろうと言われている。

魔法使いは、父母のうちどちらかが魔力適性のある者からしか生まれない。そして、母体が妊娠期に魔素を吸収して、且つ、胎児が突然変異した結果魔法使いとしてこの世に生を受けることとなる。


空気中に漂う魔素を人工的に作り出すことは不可能であり、胎児が突然変異する条件は未だに分かっていない。そのため、魔法使いを増やすことは神頼みに近い所業なのだ。





以上が、アレスがフィオナに質問した、この王国の成り立ちに関する質問の回答だった。



「少し掻い摘んでしまったけれど、おおよその話は伝わったかしら?」


フィオナは自信なさげにアレスのことを見た。

今話した内容は初等教育で皆習うことであり、幼児向けの絵本にもなっているごく一般的な話だ。


子どもでもすらすらと人に話せる内容であるが、人に教えるということに慣れていないフィオナは緊張していた。テトと古くからの知り合いという理由で家庭教師に抜擢されたのだが、自分には荷が重いと感じていたのだ。



「なんというファンタジー…」


「えっ??」


現実のものとは思えない、ファンタジーの世界観溢れる歴史に、アレスは目を輝かせていた。物語の中でしか聞かなかった単語の連続に、彼女の心拍数は上がりっぱなしだ。



「とっても興味深かったです!!」


「なら良かったわ。」


キラッキラな笑顔でお礼を言うアレスに、フィオナはようやく安心した顔を見せた。



「テトってむちゃくちゃすごい人たったんだ…いや、それは知っていたけど、それ以上というか…もはやチートってやつ??あ、先生!テトってどんな仕事をしてるんですか?なんか定職に就いていないような雰囲気があるんですけど…」


本気で心配そうに尋ねてくるアレスに、フィオナは堪らず、横を向いて小さく吹き出した。さすがはダミの姉である。



「とても立派な仕事をしているわ。フリーデン様が張り巡らせた初期の結界の保持を行っているのよ。それは魔法使い様にしか出来ないことで、これは毎日魔力を注ぎ込む必要があるの。魔法使い全盛期の頃は、魔力量に秀でた者が100人ほど集まって結界の維持を行っていたと言われており、それが今はテトラス様とタテロット王太子殿下しかいらっしゃらないから、かなりのご負担になっているはずだわ。」


「100人分をたったの2人って…何をどう計算したら良いか分からないけど…でも多分きっとものすごいことなんですね。」


「ええそうよ。命を賭してこの国を守ってくださっているの。」


「命を賭して…?」


フィオナの口を突いて出た物騒な言葉に、思わずアレスは聞き返してしまった。

いつだって余裕そうに見えるテトには似つかわしくない言葉だと、そう思った。



「…ごめんなさい。関係のない私が余計なことを話し過ぎたわ。」


フィオナは謝るだけでそれ以上詳しいことは何も話してくれず、今度はこの国の一般常識について説明を始めた。




「今日はここまでにしましょう。アレス様は飲み込みが早くてとても助かるわ。」


そりゃ、ファンタジー・空想・妄想大好物ですからね!もしもこんな世界だったら…ってそんなことばかり考えて育ちましたから!!


「フィオナ先生の説明がとっても分かりやすいおかげです!」


本音を伝えられないアレスは、適当にフィオナのことを煽てた。が、彼女の軽いノリを本気にしたフィオナの頬はほんのりと赤い。



「まぁ、アレス様ったら、嬉しいことを言ってくれるのね。」


「フィオナ先生、私のことはどうか『アレス』と呼んでください!師事を受けているの私の方ですから。」


「ありがとう、アレスさん。私には口の減らない弟しかいないから、可愛い妹が出来たみたいでとても嬉しいわ。…そうだわ、アレスさん。テトラス様のことで知りたいことはないかしら?子どもの頃からの付き合いだから、昔の話も教えてあげられるわよ?」


「え、知りたい!テトはどんな子どもでしたか?ダミ以外にも友達はいましたか?昔からあのきったな…黒いコートを来てたんですか??周りから怖がられてませんでした??」


「ふふふ、アレスさんはテトラス様に興味津々ね。よし、順番に答えていってあげるわ!」


アレスの人懐っこい態度に気を良くしたフィオナは、後からテトに怒られる可能性など微塵も考えず、ノリノリでアレスの質問に答えていった。そして、調子に乗り、聞かれていないことまで話し出してしまった。



ダミと同じ属性を持つフィオナは元来の性格はかなり溌剌としており、アレスと意気投合してしまった。勉強そっちのけで雑談を楽しむ二人。


側から見れば、美人と可愛らしい女の子がきゃっきゃしながら話している、なんとも眼福な光景であったが、話題にされている張本人からすればそれは地獄絵図でしかなかった。




「…フィオナ、ここで何の話をしている?」


「「ぎゃああああああああっ!!!」」


帰宅後、真っ直ぐにアレスの様子を見に来たテトがまず発した言葉だった。


女性相手のため、魔力を脅しに使うことはしなかったテト。

しかし、やましさしかない二人は、彼の普段の口調ですら責められているように聞こえてしまい、その恐ろしさから悲鳴を上げた。






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