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【本編完結】異世界転移したので、まずはそれっぽい名前を名乗るところから始めようと思います。  作者: いか人参
本編

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重役達の会議①


ここ、王宮内にある会議室には、王命により、この国の重鎮達が集められていた。だが、肝心の王の姿はどこにも無い。


赤い絨毯と煌びやかな金の装飾が目立つ会議室だが、皆の表情は険しく、今回の用件が良くない話であることが容易に想像がつく。



タテロット王太子に、王位継承権第二位のテトラス、王位継承権第三位の王弟 カエサル、西都を治めるダルダッド・シュトナー大臣、東都を治めるコリー・アンダーソン大臣、そして今回報告者として召集された、魔導隊大隊長 カルトン・コピルトだ。



「早速だが、コピルト大隊長から報告を。」


テトといる時とは違い、完全に為政者の仮面を被ったタテロットが低い声で指示をした。

指名されたコピルトの額にはじわりと汗が滲んでおり、この場に慣れていないことがよく分かる。



「はっ」


いつもの癖で敬礼をして立ち上がったコピルト。タテロットに、目線でやんわりと着席を促され、慌てて席についた。



「先日、最西端の結界を破って国内に侵入した鳥型の魔獣に続き、他の地域でも魔獣が接近したとの報告を数件受けております。中には、魔獣の群れが結界間際まで押し寄せたとの報告もあり、結界が僅かにでも弱まれば突破される危険性が高くございます。急を要する事態かと思われます。」


コピルトの報告に、テトとタテロット以外の面々が息を呑んだ。

魔物の接近情報を耳にしていたが、これほどまでに危機感を抱くべきものだとは思っていなかったのだ。


フリーデン王国は魔法大国として建国し、その後数百年は魔獣が寄ってくることはなく、脅威とは無縁の暮らしをしていた。だが、ある時から王国を囲む魔獣が増え、反対に、魔力を扱える者の生まれが減少傾向に変わったのだ。


そのことに危機感を抱いた当時の王が、魔法使いの人口を増やすために、魔力を持つ者同士の婚姻を禁止し、且つ、魔力を持つ男性には一夫多妻制を義務とした。また、魔法を使える者は、王宮に入ることを強制し、その力を国益のために使うことを誓約させた。

そして、それらは今もなお続いている。


だが、そうまでしても、魔法使いの人口は減る一方で、今では、テトとタテロット、魔力が枯渇寸前の国王と王弟しかいなくなってしまった。




「これはこれは…やはり、ロワール公爵は早々に王宮入りすべきではないかと。私は、国のためにこそ、そのお力を使うべきと考えますな。歴代最強と言われるお力をお持ちなのですから。」


自慢の長い白鬚を手で撫で付けながら、テトに苦言を呈したのは、西都を治めるシュトナー大臣だ。口調こそ穏やかなものの、非難めいた目をテトに向けている。



「私もシュトナー大臣の意見に賛成ですな。一刻も早く、国の結界を強固なものにしなければ、フリーデン王国の存続に関わる。国のためにとはいえ、若い命を使い潰すことに心は痛むが、それも国があってこそですからな。ロワール公爵が王宮入りすることを強く望む。」


シュトナー大臣の意見に賛同を示したのは、同じく東都を治めるアンダーソン大臣だ。



本来であれば、魔法を使える者は成人を迎えたタイミングで王宮入りしなければならないという法律があり、この大臣達は、特例として、特別に王宮入りを遅らせてもらっているテトのことを責め立てているのだ。


魔法使いを王宮入りさせることには二つの狙いがあり、一つ目は貴重な魔法使いを国の所有物化することで、その力を国の権限で存分に使えるようにすること。もう一つは、王家の名を授かることで魔力量を増幅させることだ。

これは言い伝えに近く、推測の域を出ない話だが、この話を妄信している者が多い。




「ロワール公爵からは何かあるか?」


絶対にあいつキレているだろうなと思いつつ、タテロットは何食わぬ顔で尋ねた。

その瞬間、テトを中心に、会議室全体の空気が波打った。

感情の昂りとともに僅かに漏れ出た彼の魔力が引き起こした波動に、大臣達の顔が強張った。



「それで、私の命を使い潰して、それが尽きた後はどうする?次の魔法使いが生まれるまで、魔獣に襲われないことを神に祈って待つのか。」


その声は冷ややかであった。


テトは、鋭い眼光でシュトナー大臣、アンダーソン大臣、この二人を射抜いた。

自分たちのことしか考えていないことを見透かされた二人は、同時にテトから視線を逸らした。

言い返すことの出来ない大臣達に、テトは更に言葉を重ねる。



「私は、その場凌ぎではなく、恒久的な策のため己の研究に時間を費やしているのだ。全てはこの国の存続のために。その私の邪魔をするのであれば、それ以上に有用な策があって然るべきだろう。違うか?」


「くっ…」


「無策で人に指図をするな。」


テトの追及にもう何も言えなかった。

彼のことを忌々しい目つきでで睨みつけることで精一杯だったが、そんな虚勢でさえも、テトに鼻であしらわされてしまった。







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