異世界転移かも
「え?私コンビニに行った時の格好のまんまじゃん!ちょっと待って、、でも私車に轢かれて…本当にここ異世界…?嘘でしょ…こんなことになるなら、もっとちゃんとした服を着ておけば良かった…」
彼女は自分の格好を見て絶望していた。
他に気にすることは山ほどあるはずなのに、気が動転していた。
「ステータス、オープン」
彼女は、手を前に出し、真剣な眼差しでいきなりそれっぽい言葉を発した。
「なーんて!異世界なら魔法が使えるかもって、自分のチートスキルにちょっと期待したけど、なんも出ないや。」
道のど真ん中で、見慣れない服装を着た女がぶつぶつ独り言を言っている姿に、街の人々は怪訝な視線を向けた。
「!!」
彼女の周りに人が集まって来た。
とても心配しているようには見えず、自警団を呼んでくるかなど物騒な言葉も聞こえた。
どうやら、不審人物として警察に突き出すつもりでいるらしい。
うわ、やばっ!!人が集まって来た!!ふざけている場合じゃなかった!!みんなの視線が怖いっす…
ここで捕まったら普通に処刑とかされそう…
まだ状況がよくわからないけど、ここはひとまず逃げるべき!!!私は命が惜しい!!
なりふり構わず、走り出した。
しかし、右も左も分からない初めての世界で向かう宛などあるはずもなく、追手を巻くように適当に何回か角を曲がった。
なるべく大通りから離れ、人がいない路地裏を選んで走り抜けて行った。
「はぁ…はぁ…ここまで来れば一旦大丈夫かな…変にオシャレとかしてないで、動きやすい服装で良かったかも…」
膝に手をつき、肩で息をしていた。
すーはーすーはーと、呼吸が整うまで、深い深呼吸を繰り返した。
「もうすぐ暗くなりそうなんだけど、、、さて、これからどうしたものか…」
立ったまま腕を組んで悩むポーズをしてみたが、全く持って何も思いつかない。
冷静さだけが頼りであった。
物事を俯瞰して捉える癖があり、仕方のないことは仕方がないと割り切る傾向にある。そのため、こんな信じられない現実に直面しても、普段の自分を保っていられるのだ。
かろうじて、手元に水はあるから今日明日くらいは凌げるかな…
でも、餓死寸前の身体じゃなんも出来ないから、暗くなる前に少しでも何か情報を取りに行くか…
「…たすけて」
「ぎゃあああああ!!」
いきなり声が聞こえた。その死にそうな男の声に図太い悲鳴を上げた。人が集まってくることを警戒して、慌てて口を押さえた。
一応、声がした方を見ると、黒のコートに身を包んだ男が道端に倒れていた。フードを被っているせいで顔が見えないが、その声から、若めの男性だと思った。
しかし、自分も助けてもらいたいくらいのこの状況、他の人に構ってる余裕はなかった。
彼女は、潔く無視することに決めた。
幸いなことに、男は地面に顔をつけたまま倒れている。自分のことは見えていないはず…
そう思い、ゆっくりと男から視線を外し、来た方向へと身体の向きを変えた。そして、情報収集のために、街中に戻ろうと一歩を足を踏み出した。
「ちょっと待って…」
その時、後ろから男に肩を掴まれた。