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アレスの1日①


翌朝、目が覚めたアレスは、初日と同じように使用人の手を借りて身支度を整えた。人に手伝ってもらう着替えにも少しずつ慣れてきた。

今日は出掛ける予定が無いため、締め付けの少ないシンプルな部屋用のワンピースを着ている。


着替えが終わってしばらく経つと、ドアをノックする音が聞こえた。



「テト?」


もう帰って来たのかと慌ててドアを開け迎え入れようとすると、目の前にいたのは、テトではなく、食事を運んできた使用人であった。


自分がいないからと、テトが気を使って、アレスの部屋に食事を運ぶように手配してくれていたのだ。

その気遣いが嬉しい反面、アレスは彼がいないことへ寂しさを感じていた。





「暇だ…」


朝食を終え、食器を下げてもらったアレスは、ベッドの上に転がり、暇を持て余していた。



「邸内くらいだったら良いかな…」


アレスはベッドから這い出ると、恐る恐る扉を開け、長く続く廊下の左右を見渡した。誰も歩いていないことを確認すると、なるべく音を立てないように廊下に出た。


なんとなく悪いことをしているような気分のアレスは、キョロキョロと周りを気にしながら、挙動不審に邸内を彷徨いていた。


多くの使用人が働くこの邸で誰にも会わないはずがなく、進行方向からこちらに向かった歩いてくるお仕着せ姿の女性が見えた。



げっ…



慌てて逃げようとしたが、ここは長く続く一本道の廊下。左右に逃げ道はなく、前に進むほかなかった。


急に回れ右をする方が不審者だろうと考えたアレスは、覚悟を決めて堂々とすれ違うつもりだったのだが、そのだいぶ手前で相手の方が歩みを止め、壁際に下がった。そして、アレスに向かって恭しくお辞儀をしてきた。



おおおおおおっ!!!


時代劇でよく見る、偉い人とすれ違う時にやるアレだーーー!!!カッコいい!!さすがはスーパー使用人っ!!様になってるね!まさか、自分がされる側になる日が来るとは…感無量です…



アレスは生で見る一流の所作に感激し、勢い余って、壁際に寄った使用人に近づき、真正面からお辞儀を返してしまった。

しかし、さすがはスーパー使用人、客人の突飛な行動に吹き出すのをグッと堪え、片眉を上げるだけでなんとか気持ちを抑え込んだ。


そんな彼女の苦労など知らず、アレスは、良いもの見せてもらったぁとご機嫌でその場を後にしていた。




「うわぁ、すごっ!」


目の前に広がる整えられた花壇とヨーロッパ感溢れる噴水に、思わず声が出た。


アレスは玄関を出て、庭に来ていた。初めてここを訪れた時は夜だったため、明るい陽の元で見る庭園は、一層煌めいて見えた。秋らしく乾いた風が肌に心地よい。


特に花に詳しいわけでもないアレスは、花壇の間をなんとなく歩き回っていた。

適当に練り歩くうちに、門の方まで来ていたことに気付いた。



そういえば、テトって貴族の位は何なんだろう??邸のこの規模からいって…やっぱり公爵家かな?もしくはその下…ってなんだったっけ…?


この家、表札とか無いのかな?ロワール〇〇家とか書いてあったりしないかな…気になる。ちょっと見てこようっと。



アレスは、馬車二台は余裕ですれ違えるほどの広い門を抜け、左右の柱をそれぞれ確認したが、表札と思しきものは見つけられなかった。



なんだ、ないじゃん。なんだろ、どうでもいいことなのに、分からないって思うと、なんかめちゃくちゃ気になって来ちゃった…テトが帰ってきたら開口一番に聞こう。


…あれ???

これ、右にまっすぐ行くと、昨日行った街じゃない??


…ちょっと行ってみる?


一本道だし、何かあればすぐ引き返せばいいし、ほら、昨日はダミのせいで街を見られなかったんだし、仕方ないよね?ちょっと見てみるだけだから。


よし、行ってみようっと!!



暇を持て余していたアレスは自身の好奇心に勝てず、意気揚々と街に繰り出して行ってしまった。





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