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じゃれ合い


「ふはははははっ!二人って本当に仲がいいんだね!あはははっ!!」


堪えきれず…いや、堪える気もないアレスは、腹を抱えて思い切り笑い転げている。奔放な姿に、ここが個室でなかったら皆に睨まれていただろう。そして、テトはそんな彼女の隣で死にそうな顔をしている。


一体二人の間に何があったのか…そんなこと聞かずとも分かってしまうくらいに、明白な二人の反応であった。

これにはさすがのダミも、テトに対して申し訳ない気持ちを抱いていた。



「いや、さすがの俺もここまで性格悪くないぜ?これはたまたまというか…その、単なる冗談のつもりだったんだって…なぁ、分かってくれるだろう?ロワールさんよ。」


大変申し訳なさそうな顔で両の手のひらを擦り合わせながら、テトの機嫌を伺うダミ。

まったく感情の読めない無表情のテトに、もう一度謝ろうかと考えていた時、テトの瞳が緑色の光を放った。



「ぎゃああああっ!!」


ダミは悲鳴とともにソファーから飛び降り、ガラステーブルの下にするりと潜り込んだ。目にも止まらぬ速さであった。

そのまま身を顰め、何かから頭を守るように両手で押さえている。数秒経ったが何か起きる気配はない。その代わりに、テトの凍てついた声がした。



「…どうした?」


「お前怖いんだよ!それ脅しに使ったらダメだろ!学校で習わなかったのかよっ!」


テーブルの下に身を隠したまま、ダミはテトに向かってキャンキャン吠えまくった。正に負け犬の遠吠えであった。




「え?二人でなにじゃれ合ってんの?」


一歩間違えば命の取り合いに発展したであろうこの事態に、アレスの呑気な声が響いた。彼女は、紅茶と茶菓子を交互に口に運び、ティータイムを満喫していた。



「いやいやいやいや、こいつが魔法で俺のことを殺そうとしてくるから俺は身を守るのに必死で…」


「そんなことするはずないだろう?」


「いや…お前はやる時はやる奴だ。」


「あれ?ダミは魔法使えないの?この国の人は使えるんだと思ってたんだけど。」


一方的に怯えるダミに、アレスは紅茶を片手に、不思議そうな顔をした。


アレスのダミ呼びに、テトの片眉がピクついた。どうしてあいつは自然に愛称呼びをされてるんだ…彼の顔にそう書いてある。

そんな彼の嫉妬の視線を痛いほど感じながらも、これ以上彼のことを刺激したくないダミは、無視を決め込んだ。



「あれ?テトから聞いてなかったか?この国で魔法を使えるのはテトとこの国の王族だけだって。だから魔法は国益のために使うとされていて、こんな私的理由で使ったら罰せられんだよ。」


「おい、アレスに余計なことを言うな。」


ダミの言葉に、アレスの顔から血の気が引いていく。顔色が悪くなり、口に運ぼうとしていた茶菓子を皿の上に戻した。



「そうだよな、知らなかったら驚くよな。こいつ、こんなんだけど王太子と同じくらいの権力を持っていて、いずれは王家に…」


「え、どうしよう…っ!!」


ガタンっと大きな音を立ててテーブルに手をつき、アレスはソファーから勢いよく立ち上がった。

誤って彼女が手をぶつけて火傷しないよう、テトは彼女のティーカップを自分の方に避けた。



「いや、そんなに焦らなくても…今すぐってわけじゃないし、その時にはきっとアレス嬢も一緒に…」


「テト!私のミルクティーブラウン、元に戻した方が良い!?」


ダミの声は、焦ったアレスの声に上書きされ、彼女の耳には届かなかった。


ダミは、初めて聞くよく分からない単語に、思い切り眉間に皺を寄せた。一方、彼女の言いたいことを理解しているテトに焦る様子は見当たらない。



「問題ない。後から見つかるようなものではないからな。派手にやらなければ大抵のことは見過ごされる。だから気にするな。」


「よかったーーーー!!!」


安堵している彼女を見て微笑むと、テトは店員を呼び、アレスのためにお茶と茶菓子のお代わりを用意させた。


なんだかんだ言って、上手いこと成り立っている彼らに、やれやれとダミは小さく頭を振っていた。





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