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under 500 Ⅱ

エイプリルフール

「あの。エイプリルフールって、知ってますか?」

「ちょっと、ごめんなさい」


「すみません。エイプリルフール、ご存じですよね?」

「何ですか、それ?」


「ウソをついてもいい日、今日ですよね? まだ、ありますよね」

「あるわけないでしょ?」


「ウソ、つきたいんです」

「はあ。習わなかった? ウソついたらダメって」

「はい。すみませんでした」



 ウソがつきたかった。ウソを信じてもらえたときの、顔が好きだから。


 なのに、ダメだった。友達に、怒鳴られた。ウソなんかつくなと、強く言われた。


 ごもっともな意見だ。みんなが正しすぎて、何も言えない。


 エイプリルフール。今年、初めて参加しようと思った。だけど、知らないうちに、廃ってたみたいだ。


 駅から出てくる人は、みんなエイプリルフールを知らなかった。


 駅前の、ぼやけた感じの床だけ見ていた。四角くて、赤と茶色の暗い感じの床。そこしか、すがれなかった。


 SNSで発信して、聞くという手段もあった。でも、エイプリルフールがなくなったことが事実なら、それは最大の恥さらしだ。


 僕は、まあまあの有名人。控えめの僕が、自分でそう言える。それくらいの、場所にいる。


 もう、何人もに聞いてしまっている。だから、全国に広がることが、もしかしたら、あるかもしれない。


 明日のネットニュースに、紛れるかもだ。




♪プルルルル


 ビクッとなった。突然の、着信音だったから。スマホの画面には、非通知設定の文字。


 恐る恐る画面をタッチし、耳に近づけた。


「エイプリルフールあるよ!」

「えっ?」


 友達の声だった。あの、怒鳴ってきた友達だった。


「あれは、ウソだよ。今日は、ウソをついてもいい日だよ」


 ドッキリの、協力者について考えた。でも、仕組みは分からなかった。


 なんか、笑ってしまった。声を出さずに笑いながら、僕はこう言った。


「嫌いだよ。あんたなんか、大嫌いだよ」

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