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第3話 初仕事

そんなこんなで翌日。朝5時。朝が早い。


身支度を整えてから、冒険者ギルドに向かう。

ギルドが開くのは7時からなので、2時間は準備時間らしい。


ギルドに入り、リンディさんとカエンさんに挨拶する。イースさんはお休みらしい。


3人で受注した依頼内容の整理や、達成した依頼の処理をしていく。

作業は割と定型的なので、1時間ぐらいで終わってしまった。


依頼を壁に貼る際に、思ったことをリンディさんとカエンさんに聞いてみる。


「依頼って地図上に貼った方がわかりやすくないですか?」

「どんな風に?」


リンディさんに聞かれたので、リンディさんに地図持ってきてもらい、向かいの空いている壁に貼った後に依頼書を地図の外側に貼り、依頼エリアに針を刺して、依頼書と針を赤い糸でつなぐ。


「こんな感じです」

「いいわね。こっちに全部張り替えちゃいましょう」


3人で新しいものも含めて100枚以上ある依頼書を30分ほどで貼り直した。


「わかりやすい」


カエンさんがそんな感想をくれた。


依頼がある箇所が見ただけでわかるようになった。

私が見た感想を言う。


「ロナの森の依頼が多いですね。ほとんど魔獣討伐」


カエンさんが答えてくれる。


「ロナの森はソラフィスに近くて、魔獣も多いから人気。浅いところはDランクでも大丈夫。けど、最深部はAランクじゃないと即死」


そう言われてみると、確かに森の深さごとにランクが分かれていた。

カエンさんが続けて解説してくれる。


「冒険者に無謀な依頼を受けさせて死なせないことも私たちの仕事。ランク付け大事」


確かにと思いながら依頼書を眺める。

ちなみにランク付けは依頼主から受注した日に、受付職員が話し合って決めてるそうだ。


そんなことを考えていると、リンディさんが私とカエンさんに話しかけてくる。


「それじゃ2人とも、そろそろ受付開けるわよ」

「わかりました」

「わかった」


受付に立ち、冒険者がやってくるのを待つ。

少し緊張する。


それからは、何人もの冒険者が依頼書を持ってきては、受け付けるという作業を繰り返した。依頼内容と冒険者の様子を見て、問題なさそうな場合は特に何も気にせずに承認をしていった。ただ、私が送り出した冒険者が生きて戻らない可能性があると考えたら、不安にもなった。


冒険者の能力やコンディションと依頼内容を照らし合わせて不適切だと判断した場合は、別の依頼を斡旋するなどもしていた。

例えばCランクに上がりたての冒険者が、Cランク上位相当の魔物に挑戦しようとしている場合とか。リンディさんやカエンさんの記憶を読んだ限りでも、このパターンは死亡率が高い。

単に魔物のレベルが高いということもあるが、Cランク上がりたてで調子に乗っている状態で自分の能力を過信して、逃げずに自滅するなどだ。

ただこの依頼はあなたには無理ですといっても反発されるだけだから、相手の意向を汲み取ったうえで別の依頼を紹介する必要があったりするのだから、難しい。


数十人の相手をこなし終わったところで、朝の行列はおおよそ捌けていた。

疲れた…。


隣のリンディさんに話しかける。


「受付の仕事って大変ですね」

「そうかもね。まあ、リリさんみたいに冒険者ごとに対応を変えると余計にね」

「リンディさんは違うんですか?」

「私は冒険者はある程度自己責任だと思ってるから。彼らの保護者ってわけじゃないしね。けど、リリさんのやり方もありだと思うわ」


そんなやりとりにカエンさんが入ってくる。


「リンディは冒険者の扱いが雑。死なれたら補充が面倒」

「カエンは結構冒険者の面倒見がいいよね。ただ、言葉足らずで上手くいってないことも多いけど」

「アドバイスして無視したやつは知らない」


受付の仕事をして思ったけど、依頼を受ける時に誰が受付担当かって生存率に直結してそう。


そんな私の心を見透かしたようにカエンさんが話す。


「私のところの常連はリンディのところに行かない。リンディのところだと危ない依頼でも普通に受けられて怖いとか言われてる」

「むしろ私のところの常連はカエンは慎重すぎて面倒って言われてるわよ。まあ、そんな風に慎重派はカエンのところに集まってるから、私はあんまり依頼内容について深く考えていないっていうのもあるのよ」


言い合っている二人を見ると、性格は真逆のようだけど、相性は良いように感じた。


少し気になったことを聞いてみることにした。


「常連とかあるんですね」


するとカエンさんが答える。


「私のところの方が常連が多い。慎重じゃない冒険者は早死にする」


そのあとに、リンディさんが続ける。


「確かに私のところの方が常連は少ないわね。けど、私の方が受付としては人気よ」


それは、人気なのに常連が少ないということは、つまりリンディさんの担当した冒険者は死んで入れ替わってるということでは…。


リンディさんが補足する。


「一人当たりの時間もカエンの方は私の倍は長いと思うから、捌けてる人の数が多いというのもあると思うけど」

「早く捌いても死なれたら意味がない。低ランクばかりにしたいのか」

「冒険者なんて短命な職業だもの。気にしていたらキリがない。それに、カエンのペースで処理していたら人を捌ききれないでしょ」

「人命優先」

「頑固ね」


考え方って人によって違うんだなと思いながら話を聞いている。

そういえばと思い、さらに聞いてみる。


「ということは私に来てた冒険者はリンディさんが処理されていたものということでしょうか?」


それに対してカエンが答える。


「そうなる。そして、リンディが雑に放り出そうとしていた冒険者がリリが一定数助けたことになる。本当助かる」

「本当に過保護ね、カエンは。まあ、そういうわけでリリさん、頑張ってね」

「ちなみに昨日いたイースはリンディと同じタイプ。最近リンディとイースが受付してた結果、冒険者の生還率下がってる。この2人は組ませちゃだめ」

「あの軽薄男と同じ分類にされてるのは傷つくのだけど」

「実際同じだから仕方ない」


そんな二人と適当に会話しながら、仕事を進めていって、その日は何事もなく過ぎて行った。


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