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もふもふ

ᓚᘏᗢ バッティング ᗢᘏᓗ

作者: 山目 広介

 辞書にはこうある。


バッティング【butting】

【一】[名]ボクシングで、頭・額・肩・ひじなどを相手にぶつけること。反則となる。

【二】[名] (スル)《【一】から転じて》予定などがかち合うこと。物事が競合すること。

[補説] 【二】は日本語での用法。


 その日、うちの猫はこのバッティングをしてきた。

 ボクサーでもあるまいに。

 これはウチの猫と私のボクシングもどきだ。




 ウチの猫は最初、シャドーボクシングのように私の近くで猫パンチを軽くスイングをした。

 私は微動だにしない。

 これに反応しない私に焦れたのか、私に接近する猫。

 ジャブでは意味がないと強烈な一撃を与えるために間合いを詰めてきた。

 そして炸裂する猫パーンチ。


 このパンチをミリ単位で躱してはいけない。

 それは猫パンチには爪があるからだ。回避したと思ったらズバッと切れていることになる。

 これをギリギリで躱そうと思っても皮膚に引っかかり、鋭く引き裂くからだ。

 だから猫パンチへの対策はぶつかることだ。それなら単なる打撃へと変わる。

 多少爪の先端が突き刺さっても、それは点でしかない。線となって切り裂かれるよりはまだマシだろう。


 ペシッペシッと頬を叩く猫。左の連打。

 次は右ストレート。三閃。瞬く間に繰り出される猫パンチ。速い。

 だが私も負けじと耐え忍ぶ。

 私は今、本を読んでいるのだ。

 なので止めて。お願い。もうちょっと待ってて。

 しかし無情にも猫の要求は続く。


――ビシッバシッ。


 ワンツー。左右の猫パンチを後ろ足に重心を乗っけて放ってきた。

 だが私も歯を食いしばって耐える。

 猫は更に踏み込んできた。ここで一気に畳みかける気だろう。

 猫は俯く。頭を下へと向けたのだ。

 上からでは目を開けているのか閉じているのかまでは分からない。

 そして体全体を使って前へと突き進む。

 その先には私の顎があった。チンと呼ばれる急所だ。首を支点に脳を揺らす気なのか。

 ヘッドバットだ。


――ゴツッ。


 更に一歩戻って、上目遣いに見上げて来る猫。うるうるした感じがする。それは気のせいかもしれない。

 私はその強烈な一撃に堪えた。踏ん張った。

 まだだ。まだキリが良くない。だから待って。心の中で懇願する。

 でも再び猫のバッティングが私の顎にヒットする。


「なぁ」


 そんな物悲しそうな声も加わって、私はとうとうK.О.(ノックアウト)したのだ。




 猫の額。

 狭い事の例えとして使われる。

 しかしこんな小さくても考える脳があるのだ。

 人類は猫の可愛さに勝てる気がしない。



参考:Weblio辞書

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― 新着の感想 ―
[良い点] バッティング……思っていたのと違うけど可愛かった(*´艸`*)
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