八話 魔王様ユニット名を決める
ぐだぐだしてきました。少し不穏ですね。
「スゥ……。あのー?……すいません」
ナデシコが喋ろうとして、この場の空気に耐えられず黙る。コレが十二回も繰り返されていた。ナデシコの目には、うっすらと涙を滲ませているがその度に目をぬぐい、自らを鼓舞しまた繰り返す。
うーむ。どうしたものか。
頭を悩ませる。ユニット名をやる以前に、この空気を何とかしないといけない。魔王としての腕の見せ所だ。
「あのさ!」
いっきに二つの視線が私に刺さる。
ぎぎぎぎ……。コレは確かにキツイ。でも踏ん張れ私!!
「ふっ……んぐ。二人はさ、こんな活動したいとかこんなユニットにしたいって、あるの?」
言葉を絞りだし、何とか空気を柔らかくしようとする。魔王軍会議でもこんな重さになることは、ほとんどなかった。
「私は……皆を楽しくさせたいかな」
おそるおそると、ナデシコは自分の意見を言う。
「頑張ろう!!マキナちゃんは?」
「ボクはない。ただお父様にやれと命じられたから、やってるだけ」
「そっ……そうなんだ!」
あがががが!!何でこの空気をさらに、気まずくさせてるんだよ!!!
「アンタは?」
マキナに聞き返される。その目は蛇のように鋭く、私は蛙のように睨まれただけでちぢこまる。
「ないみたいね。そんなんで、よく私に質問できたわね。どうせアイドルを選んだのも、可愛いカワイイと持て囃されたからなんでしょう?」
このチクチク言葉の達人め!!黙ってれば好き勝手言いやがって!!!
「マキナちゃん止めなよ……。それ言えた口じゃ……なんでもないです」
なかなか口の悪いナデシコが、睨まれ黙る。
「ふん!反論も出来ないとは、図星みたいね」
かっちーん。頭にキタ。
「チ……がう……」
怒りを押さえながら、頑張って言語化する。
「俺は皆を笑顔にさせるために、あいどるになろうって決めた。それを勝手に自分の考えで否定すらなよ!!」
気づくと私は立ち上がって、怒鳴るように言っていた。
「あっ……ごめん」
コレぐらいで怒るとは、精神年齢も年相当になっているのだろう。
それにいつの間にか、封じてたはずの俺呼びが出てきている。
「こっちこそ……ごめん」
マキナが、顔を合わせずに謝る。
「なにか起きたのか!!!」
なにかを察知したのか、なんちゃらが入ってくる。
「いえ……なにもありませんよ」
ナデシコがそう反応したが、なんちゃらはそれを見抜いたようだった。
「そうか……取りあえず、今日は帰れ。明日も同じ時間に集合だぞ」
「………はい」
そう、力なく返事をして私は部屋を後にした。
「なにかありました?」
魔王城に帰り夕食を食べていると、ジニーが珍しくそんな事を聞いてきた。
「うん。少しね……」
やらかした。好きに言わせておけば良かったのに、つい頭に血が昇ってやってしまった。
「………まぁ、まだ初日ですので、明日から頑張りましょう」
ジニーが励ましてくれる。
「うん。ありがとう」
ジニーが食器を持って、立ち上がる。
「………ジニー?なんか変わった?」
少し、違和感があった。言葉に出来ない違和感が。
「いえ。なにも?」
ジニーはこちらを見て怪訝そうにそう言った。
子供の成長は早いと言うが、多分それだろう。
「見間違えかな」
私は自分の食器を片付けるために立ち上がった。
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