六話 魔王様事務所に行く
**が過去で**が未来、または現代です。
「髪がふわふわしてて可愛い!!」
「ちっちゃくて可愛い」
「い、いえ……そんな事は……」
「絶対あるって!!ぁ゛あ゛ー謙遜している所も可愛い!!ぎゅー!!」
私は今、あいどる四人に囲まれ可愛がられていた。
可愛がりといっても、新人イビりのようなものではなく、文字通り撫でられたり抱擁されたりしているのだ。
「ずるい!!私も!!」
そう言って先輩になる人たちは、私を四方八方から抱きしめ撫でる。
もごごごこ……息がくるしい。でもいい匂い!でも、なんでこうなったんだっけ?
確かそれは、今朝のこと……。
**
「魔王様、貴方の事務所が決まりました」
私が、朝ご飯の鳥の卵をかき混ぜ焼いたた物(巷ではスクランブルエッグって言うらしい)を食卓に並べていたとき、部下でありトレーナーのジニーが、そんな事をいきなり言ってきた。
「はぇ?ギルド?」
ギルド?聞いたことがないぞ?
「アイドルは一般人と同じく、何処かに所属せねばなりません」
「う、うん」
要は会社みたいなものなんだな?
「無所属でも良いのですが、折角とのことで勝手ながら、選ばせて頂きました」
「それってあいどるとして、デビュー出きるってこと!?」
「いえ、すぐにデビューという訳ではないですが、かなり前進します」
それでも嬉しい。
「ありがとう!ジニー!」
私が笑顔で礼を言うと、ジニーも笑顔で
「どういたしまして」
と返す。
久しぶりのジニーの笑顔だが、やっぱり綺麗なものだ。この前までは、今の私みたいな身長だったというのに。
「では、ここに書いてある通りの場所に行ってください。それとそこでの、貴方の名前はマオですからね?」
そう言われ、いろいろ準備をして紙通りの場所に行ったら、高い建物があり、そこで迷っていたらいろんな人が声をかけてくれた。
そうして、何とか着くとコレであった。
**
「お前ら……」
私が苦しんでいるとき、入ってきた男が呆れたように言う。
「あっ、プロデューサーじゃん!」
一番私を強く抱きしめていた先輩が、手を放し、男の方へ向く。
「ぷろでゅーさー?」
なんだそれ?なんか言いにくい。
「えっ?君プロデューサー知らないの?」
「え、あ、はい」
「取りあえず、そういう説明は後でする。取りあえずマオ君。君はこっちに来てくれ」
「あっ……はい!うぐぅ」
私がぷろでゅーさーの方へ行こうとしたとき、さらに私を締め付ける力が強くなる。
「離してやれよ……」
私は離れ行く意識の中で、またもや呆れるプロデューサーの言葉を聞く。
「「「「いやだ!!」」」」
もはや、ぬいぐるみの状態の私はただ解放されるのを待つしかなかった。
「済まなかったな」
「いえ……ゲホ」
あのあと、何とか私は解放された。それまでにかかった時間は実に四十分。その間私は絞め続けられていた。
全く……不老不死じゃなければ、死んでいた。
「さて、これから君の仲間になる人たちに会いに行く」
「私の仲間?」
「あぁ。それも後で話す」
何でも後回し?怪しいなぁ。
「まぁ、多分皆いい子だと思うからさ」
なんとも曖昧な事を言いながら、ズカズカと進んでいく。
その希望を信じて止まない背中を見ながら、私は先ほどの独白を撤回する。
確かに、この背中なら誰もがついてくるだろう。多分いいヤツなんだろうからな。
私も部下を従えていたときは、こんな背中を見せれたのだろうか。
「さて、着いたぞ」
そんなつまらない過去の事を考えていると、それを消すようにぷろなんちゃらーが、私に声をかける。
「この部屋に君の仲間がいる」
そう言って扉を指す。
「……!」
この薄い扉一枚を介して、仲間がいる。そう思うと、心臓が鼓動を早くする。
私は覚悟を決め、 扉を開ける。
「こんにちは──」
アレ?誰もいない。
「すまん、隣の部屋だった」
全て撤回!!ダメだコイツ!
「すまんすまん」
「いえ……だいじょうぶです」
失くなった緊張感を、取り戻そうとしたが無理である。でもそのおかげで、私は変な緊張を取り除けた。もしかして、コレが狙いで?……そんな訳ないか。
私は深く考えるのを止め、扉を開いた。
「おはようございます」
中には二人の美少女が居た。
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