二話 魔王様憧れる
毎日投稿頑張ります
「はぁ……」
五百年分の話を聞き、試しに町に出てみると確かに変わっていた。
人々の服はもっとカラフルなモノになっていたし、家の素材は木から、なんかよく分からない白いヤツに変わったりしていた。
前に働いていた職場があった場所は、とんでもない高さの建物に変わっていた。
「はぇ……」
私はそれをボケッと見ているしかなかった。
全てを見終わった後、酒場の一角に席をとりジニーと座る。
知らない間に20以上にならないと、酒が飲めないとか、変な条例ができたらしい。
そのせいで14歳の私が飲んでるのは、謎の黄色の甘い液体だった。
「そんな溜め息を、吐かないでくださいよ」
「はぁ……」
無限に溜め息が出てくる。
私が持っている硬貨は五百年前のもので、当然高くなってると思ったのだが、なんと、思ったより安かった。
当時、高級料理店を店ごと買っても、お釣りがくるぐらいあった全財産を換金しても、現在の価格の10000ゼル──つまり一ヶ月二人で生きるのに、少し心もとないぐらいだった。
「さて、仕事はどうするんですか」
私の財布の中身を、すべて換金し終えたジニーがそう言う。
「そうだね……」
疲れていた私は、冗談混じりで適当に酒場に貼ってある紙を指す。
「これでいいよ」
それはそうと、ホントに早く仕事を見つけないと……。
「ホントにですか!?」
ジニーが珍しく驚いてる。
内心焦っていた感情が、そっちに行ってしまう。
「分かり……ましたwブフォww」
なんかジニーが耐えきれず、失笑している。そんなにヤバイ仕事だったのか?
「どれどれ?」
俺は自分が指した紙を見る。
それには、新人アイドル募集中!!
と書かれていた。
「あい……どる……?」
なんじゃそれ?
目が点になりながら、酒を呷り(あおり)爆笑しているジニーに聞く。
「あはははwあれですよwあれ」
そう言って、酒場のほとんどの客の視線が、注がれている箱形を指差す。
「……これが、あいどる?」
そこには沢山の光に包まれて、笑顔で躍り歌う女の子たちの姿があった。
「………眩しいな」
ほとんど、無意識に言う。
「でしょうね……ずっと寝てたんですから」
呆れたように、変わらず酒を呷っているジニーの声を無視して、俺は名の知らない女の子たちに魅了される。
………すごい。この子たちはステージに立って、人々を喜ばせている。
ただ"魔王"として君臨していた私と違い、こうしてカタチに残している。
「………ジニー」
「はい?何です?魔王様」
「私………あいどるやるよ。手伝ってくれるか?」
私は部下に問う。
「なぜです?貴方のような者がアイドルになると?」
「私も……人を笑顔にさせてみたくなったから………かな?」
人を恐怖の対象として居るよりは、人を笑顔にするものとしていた方が良いからね。
また呆れたように溜め息を吐き、ジニーは私の目を見つめる。
私はその目を見つめかす。
「分かりましたよ……そんな、雨の日に捨てられた子犬みたいな顔しないでください……」
「本当か………?」
なんかおかしな事言ってるが、ジニーみたいな知識の宝庫が手伝ってくれるのはありがたい。
「その代わり、一流にするためビシバシ鍛えますからね」
不穏な事を言い、ジニーは酒場の席を立った。
「あぁ」
私もそれに答えるように、立ち上がる。
「はいダメ。可愛い女の子は、返事にあぁ。なんて言いません」
いきなり酔っているのか大声で、ジニーは叫び出す。
「えぇ………」
もう始まってるの?
「返事は『はい!』で!!」
「は、はい!」
「もっと、声を可愛く!媚びる感じで!」
「はい!?」
声を………可愛く!?無理!後、最後のは要らんだろ。
そんな感じで周りの白い目を全身に浴びながら、私のアイドルに向けての生活が始まって行った。
感想、レビュー、ブクマ、評価、拡散待ってます