一話 魔王様女の子になる!
頑張ります
「あ……」
暖かい日差しと冷たい地面に挟まれて、目を覚ます。
地べたに頬をくっつけながら、いつの間にか寝ていたようだ。
「んしょ……」
めんどくさそうに、あちこち髪の毛が跳ねている頭を掻き、起き上がると、私は洗面台へと向かう。
体が異状に重い。
昔なら使用人に世話をしてもらったものだが、今は居ないため自分ですべての事をやるしかない。
「お腹空いたなー……」
そうやって、お腹を押さえながら鏡の前に立つ。
「ん?」
私は一瞬にして違和感に襲われる。
なんか女の子居ない?
鏡の前に、ピンク髪の誰もが振り向くような美少女が居た。
頭を高速で回転させる。
………ハハァン?多分ジニーのイタズラだな!?
そう思った俺は、解除魔法を城全体に放つ。
だが、目の前の超絶美少女は消えない。それどころか、私はここにいるぞ!みたいに仁王立ちしている。
………私とポーズ一緒?
試しにいろいろなポーズをとってみる。
「どうだ!!」
だか、すべて一致。
………ホントに女の子になっちゃったの!?
「ジニィィィィーーーー」
私は叫びなから、いつもより小さくなった足で、無駄に長い廊下をトタトタ走る。
ジニーの部屋につくと、扉を乱暴に開ける。
「ジニー!!!何を──」
扉を開けた瞬間、大量の煙と薬品の混じった匂いが鼻と目にに響く。端的に言って臭い。
「ちょっと………魔王様……実験中なんで騒がないで……くださいよ。それに、部屋に……入るときは……ノックしてください。私が情事に耽ってたらどうするんですか??」
そんなくだらない事を煙の中から、ぐちぐちと言ってくるジニー。
「そんな事を……言ってる場合じゃ……」
「何ですか……?……この魔王城、売るんですか?」
「違う!!私の体が女の子みたいになってる!」
そう言うと煙の中から、眠たそうなジニーが出てくる。いつも、小さく見えるハズのジニーの背が高く見える。
「まぁ、"みたい"じゃなくて、そのままなってるんですけどね。てゆうか、私が変えたんですけどね」
「ジニー貴様ぁ!!」
やっぱ犯人はこいつか!
「今、治せば許してやるぞ!」
最大の睨みを効かせながら、私はジニーを見る。
「まぁまぁ、落ち着いて……くださいよ。あと全然怖くないですよ。むしろ可愛い」
「はぁ!?ふざけんな!それにどうやって──」
私は顔を真っ赤にして怒る。
「まぁ、聞いてくださいよ……」
そう言って犯人は、女体化事件の真相を語り出す。
「まず、この広い魔王城で、男女二人ってのがダメじゃないですか。何か間違いがあったり」
そういうもんなのだろうか?私は部下や仲間には、劣情を抱かないため分からない。
犯人は、まだまだ供述を続けていく。
「それに、魔王様の仕事じゃ食べるの難しくなりそうなので、いっそ女の子に変えて、仕事をやらせようかな?と思って薬を作って……グイッと」
「グイッと。じゃないんだよ!?しかも余計なお世話だよ!」
仕事は今ので良いんだよ!!
「いや……だって……」
とても言いにくそうにしているジニー。
あぁ!!なんでこんなとき渋るんだ!?
「言ってみろ!!」
「実は……」
「実は?」
「魔王様倒れてから起きるまでに、五百年経ってますから……多分職場消えてますよ?」
「はぁ!?」
なんだと!?五百年!?
「その間に勇者は六人代替えしましたし、元幹部のスケさん、ゴレーさん、スラミニウムさんは死にましたよ」
ろ……六人も?それに……アイツらが……。
「じゃあ、なんでジニーは死んでないんだよ!?」
不老不死の魔王ならともかく、ジニーはヒューマン──定命の者。五百年経ってるなら死んでるハズだ。質の悪い冗談であってあくれ!!
「私は、不老不死の薬を作ったので生きてますよ。天才ですので」
開いた口がふさがらん。この娘ならやりかねんのが怖い。
「ジニー?それ、定命の者にばらまいてないよね!?」
「ご心配なく。それをしたら後々、面倒くさい事を引き起こすって知ってますから」
それはよかった。安堵の溜め息を吐く。
その他にも、王が八人代わったとか、勇者の顔合わせを一人でやっただとか、文明レベルがとんでもなく上がったとか、五百年分の話を聞いた。
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