十二話 魔王様歌う
書いている途中で、某運命/大いなる使命のアイドルモノが始まりました。まさにFate。
「皆知ってるわよね?」
渡された楽譜は、この国で誰もが知っている童謡だった。
昔、ジニーに歌ったのを思い出す。
その度に部下が悲鳴をあげて、止めるように懇願していたのを思い出す。今となっては言い思い出だ。
「じゃあ、ナデシコちゃん、マオちゃん、マキナちゃんの順で歌ってちょうだい」
そう指示すると、ピアノで旋律を引きだすオネェ。
歌い始めのメロディまで来ると、ナデシコが歌いだす。
その声は、まるで細く幼さがありつつも、お母さんに歌ってもらったような暖かさがあった
まぁ、母なんていないんですけどね!
「うーん。素晴らしい。暖かいわね……。次にマオちゃん!」
そう言って弾きだすオネェ。覚悟は決まってる。
そう言って私は声を奥から出す。準備運動のお陰なのか、すんなりと声が出た。
必死にメロディーをなぞっていく。間違ったら死ぬ!!そんな勢いで。
「アナタ、聖楽隊とかオペラとかやってた?」
歌い終わるとオネェが、そんな事を言ってきた。
魔王が聖楽隊なんかに参加するワケないでしょ!!魔だぞ魔!祓われてしまうぞ!!
「いえ、参加してないです」
「そう……惜しいわね」
この反応を見る限り、大丈夫だったようだが?
オネェは一人でブツブツと何かを言っている。
「まぁ、いいわ。次、マキナちゃん」
「は、はい!!」
いつもの万物全て余裕にこなすウーマン!みたいな雰囲気はなく、返事だけで分かるぐらい緊張でガチガチに震えている。
「大丈夫?」
思わず声をかけてしまう。
「!!キュー」
ばたり、と音を立てて崩れそうになるマキナ。何とか私が体の支えになることで、頭を打つことは免れた。
「取りあえず、今日はここまで!!早く誰かぁ医者をよべぇぇ!!」
オネェが、あまりの事態に素の声をさらけ出している。
結局、マキナは過度の緊張で倒れただけだった。
「うぅーん?ここは?」
事務所の仮眠室に寝かされていたマキナが、目を開ける。
「あっ起きたよ!!」
ナデシコの言葉に、眠っていた頭を覚まさせ立ち上がる。
「マキナちゃん!?」
私は勢い良く席から立ち上がり、ベットに近寄る。
「私、プロデューサー呼んでくるね!!」
そう私と入れ違いになるように、 ナデシコは部屋から出ていく。
「何が……起きたのよ……」
私は彼女に一部始終を話した。
読んでくださりありがとうございます。感想、レビュー、ブクマ、評価、アドバイス、拡散お願い致します