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遺産相続パニック【14】


 ぱらぱらと手帳を捲っていると後ろから声をかけられた。呼びかけてくるだけでも少し怒っているような口調のこの声は大輔のものだった。彼は両腕を胸の前で組んで、俺の後ろで仁王立ちしていた。


「なにしてる」

「気になっていたから見ていただけだ」


 俺の返答が気に入らなかったらしい。大輔は口をへの字にした。


「変なことをしたら追い出すと言っただろ」

「変なことはしていない」


 少し手帳を見ていただけだ。少なくとも彼らのようにこの書斎をひっくりかえそうとはしていないだけましだろう。


 大輔に続いて伊予が書斎に入ってきた。


「あら、助手さん。貴方も暗証番号探しを手伝ってくれるの?探偵さんはどうしたのかしら?」

「雛子さんと遊んでます。依頼の内容が雛子さんの面倒をみることですので」

「なんでわざわざそんなことに探偵を呼んだんだ、親父は!」


 それには俺も同感だ。何故子守りを探偵に頼んだのか。暗証番号の発見ではなく、ただの子守り。


「それより、先ほどは何故居間のほうへ行っていたんですか」

「ちょっと休憩しようってなったのよ。ほら、もう探し始めて二時間も経つじゃない」


 そう言われてみれば、と俺は手首の腕時計を見た。人生ゲームを二回ほどやってオセロに移行していた間にそんなに時間が経っていたとは思わなかった。


「小春さんは」

「あの子は居間やダイニングを探すって」


 手分けして探すというわけだ。ここに二人いるということは最有力候補は書斎になるのだろう。


「もしかしたら、隠し子の部屋に隠してあるのかもしれないな」


 唐突な大輔の言葉に俺は思わず腕時計から顔をあげた。


「親父のお気に入りだったんだから、何か教えてもらったりしてるだろ」

「先ほど砂橋が尋ねたが、暗証番号などの数字は聞いていないらしい」


「本当だろうな」

「ああ」


 しかし、大輔は俺の言葉を聞いてもなお顎に手を当てて怪しむようにこちらを見る。


「いや、もしかしたら子供には分からないようなヒントをあいつの部屋に隠しているのかもしれない。親父のことだから俺たちが探さないだろうとか思ってメモとか隠してるかもしれないしな」


 そう言うや否や大輔はどたどたと騒がしい足音を立てながら、書斎を出て行ってしまった。追いかけると案の定、向かいにある雛子の部屋の扉を勢いよく開けて「ここを探すから出ていけ」とこれまた大きな声で言い出した。


 言い合いする様子もなく、砂橋が雛子の手を引いて部屋から出てきた。


「荒らさないでくださいね。後片付けぐらいできますよね。大人なんだから」

「そんなことは分かってる!」


 砂橋の言葉に大輔が苛立った声を返した。追い出される仕返しなのか皮肉を言えた砂橋はどこか満足気な表情をしていた。


「砂橋」

「ああ、弾正。書斎にいたの?」


 俺が手に持っている手帳を見つけた砂橋は首を傾げた。


「何か面白いものでは見つけた?」

「気になるものなら見つけた」


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