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アイドル危機一髪【30】


 砂橋さんの人差し指の先がコツコツと机を叩く。


「あ、そういえば、リンゴってフルーツフィールドと密接に関係してると思うんですよね。そういえば、五人の芸名も果物に由来してるとか。果物の名前をそのまま当てはめてる三人は分かるけど、葡萄と蜜柑はまた違った名前の付け方ですね」


「そうそう。みかんってそのまま名前にするの嫌だって言ったら、品種名で可愛い奴あるよって言われてはるかにしたんだぁ~」


「私は葡萄の品種の藤稔から藤って名前にしたわ」


 フルーツフィールドの中にリンゴを示す人間はいないはずだ。彼女たちは桃、苺、葡萄、バナナ、蜜柑。一体、リンゴは誰を指しているのか。


「あ、リンゴといえば……ふじりんごって品種なかったですか?」


 北斗の言葉に、その場にいた全員が藤の方を見た。対する藤は表情も動かさずにじっと立っていた。


「じゃあ、まさか、ストーカーの指示をしたのは藤?」


 困惑する苺果の言葉を否定したのは砂橋さんだった。


「もう一人いるじゃん。リンゴの人」


 ふじりんご以外にもリンゴの品種があるのは分かるが、品種名を多く知っているかと聞かれれば俺は答えることができない。思い浮かぶのはジョナゴールドと王林くらいだ。


「ねぇ、北斗さん」


 砂橋さんはそう言って、マネージャーの北斗に笑いかけた。


「わ、私ですか?確かに北斗という品種はリンゴにあるかもしれないですが、リンゴという意味なら藤さんが黒幕という選択も残っているじゃないですか?」


「それはあり得ないよ。あの暗号を置いたのが、藤だから」


 砂橋さんと藤だけ遅れてこのテントにやってきたのは、その話をしていたのだろう。


「藤ちゃんが……?」


 桃実が丸くした目を藤に向けると、藤はそれから顔を背けた。警告のためだったとはいえ、人のロッカーにゴミを捨てる行為に罪悪感があるのかもしれない。


「北斗さん、ダメだよ。誰もいないと思ってても事務所で作戦の話しちゃ……誰かが忘れ物を取りに戻ってきた際に盗み聞きしちゃう可能性もあるんだから」


 北斗は分かりやすく顔を歪めた。さすがに証人がいるとなれば、観念するしかないだろう。藤は一つ息を吐いて、呟くように話し出した。


「スマホを忘れて取りに戻った時に、北斗さんがはるかに話してたのを聞いたのよ。はるかのファンに色々と吹き込んでストーカーさせて追い込もうって。そしたらフルーツフィールド内の空気を悪くして解散させようって」


「はぁ!?」


 解散という言葉に苺果がいち早く反応して、苺果がはるかに詰め寄るも彼女は「え~。私、知らな~い」と言っている。


「でも、財布を盗んだのも、鍵を盗んで合鍵を作ったのも君でしょ?」

「は?私が盗んだって?」


 砂橋さんは「うんうん」と頷きながら、笑顔でスマホを操作した。表示された写真にははるかがどこかの服屋で買い物をしている様子だった。支払いの時に撮ったのだろう。彼女の手には、桃実が盗まれた財布が握られていた。


「合鍵を作る時に見た財布がブランド物で欲しくなっちゃった?」

「そ、それ、私も同じもの持ってただけだもん!」


「じゃあ、見せて。持ってるでしょ。あの財布、お父さんが桃実にあげた数品しかない物で、買った人は全員帳簿に記載されてるらしいけど。君はどこで手に入れたの?」

「だ、だって……」


 もしその話が本当なら、合鍵を作るだけでよかったのに彼女はブランド物の財布という目先の欲に目が眩んだのだ。たいした言い訳もできないだろう。


「だって、羨ましかったんだもん!私よりもテレビ出てないくせに、ももみんがあんな財布持ってたから!でも、鍵は北斗に頼まれて一回盗んだけど、はるかはストーカーの話には関係ないもん!」

「おい、はるか!」


 はるかに近寄ろうとした北斗の前に弾正が手を出した。そのせいで、彼は振り上げかけた拳を震わせたままはるかに怒鳴った。


「お前も共犯だろうが!」

「でも、北斗は最初「すぐに解散する」って言ってたのに全然解散しないし!私の仕事増やしてくれるって言ってたのに全然増えないじゃん!嘘つき!」


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