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B級ホラー幽霊事件【完】


「まさかねぇ……。また会うとは思ってなかったよね」


 探偵事務所の給湯室からコーンスープの入ったマグカップを持って出てきた砂橋はにやにやとしながら、自分のデスクで頭を抱えている笹川を見た。


 相手が笹川だからと俺もそれに便乗する。


「まさか、一ヶ月後に砂橋のことを追いかけまわしたストーカーがお前で、俺の家まで逃げ込んできた砂橋をそのまま追いかけてくるとは思わなかったな」


「ストーカーって怖いねぇ。いつ間にか、僕のアパートの部屋にも入られてたし」


「もう……忘れてください……」


 絞り出すような小さな声が抗議してくるが、笹川のストーカー行為には砂橋どころか俺が一番悩まされたのだ。


 笹川が俺のマンションにやってきて「砂橋さんを出してください」とインターホン越しに抗議したり、言い合いをしたりとそれはもう大変だった。


 俺がインターホン越しに笹川と口論をしている間、砂橋は新作のゲームで遊んでいた。


 あの時の俺はまさか笹川が大学を中退して、探偵事務所の事務員になるとは思わなかっただろう。


「ごめんなさい。本当に、反省していますから……」


「定期的に話題に出そうね。ストーカーなんて気持ちの悪いことまたされても困るし」


 砂橋の気持ち悪いという言葉でトドメを刺されたのか、笹川は死んだようにデスクに突っ伏すと動かなくなった。


 笹川がストーカーをやめた日、彼は俺に宣言しに来た。砂橋は逃げ込んでいないのに、どうして俺の方に来たのだと思っていると彼はインターホン越しに言ったのだ。


砂橋さんの部屋の中に入ったと。


 俺は彼を部屋の中に入れた。すると、彼は俺の様子を見て、怒ってきたのだ。


 何故、あのような状態の人間を放っておいているのだ、おかしいと。


 そして、俺は笹川を殴って気絶させてしまったのだ。


 申し訳ないとは思わない。今の俺が同じような状況になったとしても笹川のことは殴っていただろう。


「今日は久しぶりに手巻き寿司でも食べるか?」


「回転寿司にでも行こうよ。今日はしょうがないから笹川くんも一緒に食べていいよ」


「本当ですか⁉」


 使われていないキッチン。ほとんど物が入っていない冷蔵庫。本が一、二冊置かれているカラーボックスが一つ。申し訳程度に畳まれて部屋の隅に置かれた布団。剥き出しのフローリングの上に広げられたブルーシート。


 あんな部屋を見たら誰だって頭のおかしい人間だと思うだろう。そして、それを放置している人間に物申したくもなる。


 まぁ、余計なお世話だとしか言えないのだが。


「それじゃあ、今日は笹川くんの奢りね」


「えっ、あ、はい……ちょっと待ってください……財布の中身を確かめます……」


 さすがに笹川が不憫になって「俺が払う」と手を挙げると、彼は珍しく俺に礼を言った。


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