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B級ホラー幽霊事件【16】


『ここも、子供部屋か?』


 透が階段を上り終わるとすでに二階の廊下に新田の姿はなく、カメラは彼の声を追いかけるように右手の扉をくぐった。


 そこには、子供用と覆われる小さな勉強机とベッドがあった。一階にあったものと違うのは細かい装飾がされていないところだった。勉強机の横にはおもちゃ箱のような木製の箱が置かれており、蓋が開いたその箱の中にはミニチュアの緑の兵隊などが大量に入っていた。そして、その兵隊はおもちゃ箱の中だけではなく、埃塗れのカーペットにも散らばっている。


『兄と妹って感じか?』


『あとは母親と父親がいるとして、四人家族でしょうか』


 軽く考察をしつつ、新田は子供部屋を出ようとして、ふとクローゼットの前で立ち止まった。


『どうしました?』


『ほら、よくあるだろ? ホラー映画で子供が殺人鬼から逃げて隠れる場所と言ったらクローゼットだって』


 そう言いながら、新田が少し勢いをつけて、クローゼットの扉を開ける。埃をかぶっている洋服がクローゼットの真ん中を避けるようにして、左右に寄せられているように見えた。


 そして、クローゼットの真ん中の位置。洋服の下とクローゼットの床の真ん中部分が、黒く染まっていた。


『……ビンゴって言っていいか』


『もしかしたら、一階の子供部屋にも?』


『どうだろうな。兄と妹、どっちも同じようにクローゼットに隠れるような子供だったらありえると思うけど……』


 新田は肩を竦めて、クローゼットの扉を閉めた。クローゼットの中を物色したりはしないらしい。


 二階にはもう一部屋あり、そこに向かう新田の背中を追い、最後の部屋へと向かう。トイレや洗面所なども途中にあったが、何もなさそうな場所ということも関わらず、トイレや洗面所の扉も、小さな物置小屋の扉も全てが開かれていた。


 残った部屋は、寝室だった。


 大きなダブルサイズのベッドが部屋の真ん中に置いてあり、寝室に入った新田と透は立ち止まった。


 今回は探すまでもなく、そのダブルサイズのベッドの埃をかぶったシーツの真ん中に黒い染みが広がっていた。成人男性が一人横たわってできたような黒く立てに長い染みは存在感を放っていた。


『……四人目ですね』


『すげぇな……』


 感嘆の声をあげた新田が寝室の中へと入っていき、ベッド横の棚へと手を伸ばした。ベッド脇のもうつくことのないランプの前に転がった小さな写真立てを新田が拾い、棚の上に立て直す。


 写真立ての表面は割れていたが、その中の写真はきちんと写真立ての中に存在したままとなっていた。


 色褪せた写真の中にはこの建物の玄関と、その前で並んで映っている家族四人がいた。父親と母親と、少年と少女。背格好から見ると少年と少女は、兄と妹だろう。


 そして、この四人が、この建物で惨殺された家族だろう。


『誰がなんのためにこの家族を殺したんでしょう……』


『さぁな。金目の物を目当てにしてきたにしろ、こんな山の中に来る理由が知れねぇな』


 新田と透が首を捻るも答えは出ず、二人は先ほどと同じくゆっくりと階段を下った。


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