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B級ホラー幽霊事件【11】


 新田と石間が懐中電灯を持って、建物の中へと入っていくのを透のカメラがゆっくりと追いかける。玄関には埃塗れのマットが置かれ、廊下には先ほど建物内に入った三人の足跡がくっきりと残っている。猫の足跡らしきものもある。


玄関に入ってすぐに二階へあがるための階段がある。手すりが壊れていて、廊下に手すりの破片が落ちていた。破片を避けて、奥に進むと扉が開け放たれたままのダイニングとキッチンが現れた。


『空き巣にでもあったのかってぐらいに荒らされてるな』


『どうして、ここに住んでいた家族は惨殺されたのかしら……』


『え? この家の持ち主って惨殺されたんですか?』


 ソファーに座って作戦会議をしていた時、カレーを作っていた透の不安がカメラのブレに現れた。


 そんな彼の不安を感じ取ったのか、新田がカメラに向かってにやりと笑った。


『もしかしたら、この家には惨殺された一家の怨霊が残ってるのかもしれないぞ~』


『まさか』


 自己紹介でホラーには耐性があると言っていた透は幽霊などいるわけがないというニュアンスの籠った言葉を自分を驚かそうとしている新田に向けて言い放った。


 ガラスが内側に飛び散っているキッチンの窓に寄り、石間が足元を見る。


『皿もコップも割れてるみたいね。空き巣っていうよりも誰かが暴れたみたい』


 彼女の言葉はあながち間違ってはいないだろう。


 キッチンの惨状はひどいものだった。戸棚も収納スペースもほとんどが中途半端に開かれており、その中にあったものは床に散らばり、形を崩している。収納されていた全てが出ているわけではないみたいだが、誰かが家探ししたようにキッチンは荒らされていた。


 空き巣だとしても、キッチンを荒らすようなことをするだろうか。


 もし、金目のものが目当てだとしたら、書斎など金庫がありそうな場所を探すだろう。皿やコップがしまわれている場所を探したりはしない。食費などのお金まで探していたとしたら、隅々まで探すだろうが……。


 家探しなど時間をかけるものではない。金を見つけたら、さっさと去るはずだと思うのだが。


『おい。これ、見ろよ』


 キッチンの流し台の下の収納スペースの扉が他の部分と違う色になっていた。他の収納スペースの扉が白く色褪せているのにも関わらず、流し台の下だけは黒くなっていた。その染みは床から流し台のすぐ下まで伸びていた。


 そこに人がもたれていたとしたら、そして、その人が大量の血が流れるほどの怪我を負っていたら、そんな染みができるだろうなと思えるような形の染みがあった。その黒い染みは床にも広がっていて、さらにその想像の手助けをする。


『もしかして……ここで人が?』


 惨殺事件があったことも本当か否か怪しかったが、この染みがあることで惨殺事件が真実味を帯びてくる。


 一拍の沈黙の後、誰かがガラスかコップの破片を踏んだ。


『この家の家族って何人いたんですか?』


 意外にもこの状況で冷静さを保っていたのは、カメラを長谷から任された透だった。


『さぁ……詳しいことは俺も聞いてねぇな。家族写真とかねぇか?』


『探してみますか』


『よくやるわね……』


 ホラー耐性のない者はこの場にはいないため、三人は洋館の探索を続行するようだ。長谷がカメラを透に渡したのは英断だったと思われる。


 透が落ち着いているのもゾンビゲームなど、探索をしつつ謎解きをするようなゲームをやっているからだろうか。確か、有名なゾンビゲームはゾンビを撃つだけではなく、高度な謎解きもあった気がする。


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