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アイドル危機一髪【13】


「今日はよろしくお願いします」


 俺が頭を下げると、フルーツフィールドの五人のうち四人が同じように頭を下げて「よろしくお願いします」と返してくれたが、一人だけ「よろしくー」と手をひらひらと振った。手をひらひらと振ったのはオレンジ担当のはるかだ。ツインテールが特徴的なおバカキャラとして通っている。礼儀はきちっとしていないが、友好的でないということではないだろう。


 彼女たちはこの後、ショッピングモールでのイベントに呼ばれており、メイクをしてから現地に向かうのだ。時間はあるので、衣装合わせとメイクを一人ずつやっていくのだ。


 最初は苺果からメイクをする。メイクをしているとフルーツフィールドのメンバーもいつも通りの会話を開始した。どうやら、自分たち以外に人がいようがお喋りできるぐらいは仲がいいらしい。表面的には。


「そういえば、今朝も手紙が入ってたの」


 桃実が唐突に話題を変えた。その話にはるかが楽しそうに「あはは」と笑い声をあげた。


「まだストーカーされてたの?勘違いとかじゃなくてぇ~?」

「ちゃんと手紙がいれられてるから勘違いじゃないと思うんだけど……」

「他のところでそれ言ったりしたの?」


 はるかの隣の椅子に座ってスポーツドリンクを飲んでいた藤が首を傾げた。藤は、フルーツフィールドの中のブドウ担当で、髪は肩甲骨まで伸びた黒色で、背はグループの中でも高く、シルエットがすらっとしている。


「うん、ちょっと知り合いには相談したんだけど」


 桃実は少し視線を落としながらそう言った。


「警察にはお願いだから相談しないでよ」

「えぇ、苺果ちゃん、それは冷たくない?」


 俺に髪をヘアアイロンで整えられている苺果が口を出すと、お菓子を食べていた奈々が肩を竦めた。その反応が気に入らなかったらしく苺果は眉間に皺を寄せた。


「だって、今はこのグループにとって大事な時期なのよ?分かってる?」


 その口調は少し強く、桃実は思わず俯いた。


 周りの反応から察するに「迷惑事には巻き込まないでほしい」というのが伝わってきた。確かにストーカー被害に関わるなんて百害あって一利なしだろう。例え、ストーカー被害にあっているということは本当だとしても嘘だとしても。


「分かってるって~。もう~、心配性だなぁ、苺果ちゃんは」


 はるかがくすくすと笑った。苺果は髪を整えてもらっているので頭を動かすことができず、反論するのも面倒になったのかため息をついた。


 それで話はいったん終わり、桃実が「ちょっとトイレ行ってくる」と言って部屋から出て行った。


「じゃあ、次は奈々さんですね」


 苺果のセットが終わり、奈々が俺の目の前に座った。そろそろ何か話すかと思って俺は口を開く。


「ストーカーって大変ですね……」


 しみじみとしながら言うと苺果は「まぁ、本当かどうかは分からないけどね」と椅子に座りながらまた大きなため息をついた。


「本当かもしれないじゃーん」


 はるかの声音は楽しそうだった。チョコクッキーを机の上に並べて、一つずつ食べ始めた。そういえば、あのチョコクッキーはたまに砂橋さんが食べているものだった気がする。


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