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姿のない文通相手【20】


「違うよ。最後のマークは交番や高塔の地図記号と違って、弾正もよく見かけているものだと思うけど」


「よく見かけているもの?」


 よく見かけているものと言われても、あの折り紙の中にあった他のマークといえば、花だ。


 花びらが五枚程ある、特徴のない花。あれが何かのメッセージだというのなら、それは大野百合子と清水の間でしか分からない何かだろう。


 砂橋は俺の悩んでいる様子など見もせずに、十五センチほどの幅があるチーズケーキの箱を取り出して、カゴの中へと入れた。


「笹川くんは何がいいと思う?」


「甘いものよりも渋い味の方が好みだと思うが」


 笹川はチョコレートや飴をよく食べいている砂橋とは違い、煎餅などを食べている印象がある。もし、買うとしても甘いものよりも煎餅やつまみの方が嬉しいのかもしれない。


 砂橋は、煎餅が二十枚程入っている長方形の箱を二つほど手に取った。


「笹川は二箱も食べないと……」


 砂橋はくるりと俺を振り返ると片手に一つずつ持った箱を片方は横にして、空中で重ねた。その形は、今日何度も見たものだった。


「十字か」


「ただの十字じゃないよ。赤い十字だ」


 砂橋は煎餅の箱を二箱カゴの中に入れると「あ、一つは笹川くんで、もう一つはお姉さん用ね」と付け加えた。


「赤い十字……」


 確かによく見かけることがある。その記号を使うことができるのは法律で定められている組織だけだが、よく病院や医療を象徴するマークだと思われている。


「本当なら違うんだけど、イメージとして赤い十字ってのを使いたかったのかな。緯度と経度で調べた数字の場所も病院だったし」


「なるほどな」


 病院の一般的な見舞いの受付時間は午後五時までだと俺は思っている。ここはずいぶんと山奥だ。病院が近いとは思えない。すくなくとも栄えた街に行くまでは高速道路を一時間以上は走らないといけない。もしくはそれ以上時間がかかる場合もある。


 先ほど、砂橋が俺に時間を聞いてきた時は一時半頃だった。


 果たして、清水は病院の見舞いの受付時間に間に合うのだろうか。


「まぁ、今日間に合うかどうかは知らないけど、病院に相手がいるなら急いだ方がいいんじゃないの?」


「お前がそんな気配りができるなんてな」


「なに?高級そうなお肉たくさん買えって?」


「そんなことは言ってない」


 砂橋は肉類が置いてある区画へと向かって、歩き始めていた。


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