学校潜入編【32】
砂橋に二年二組で行われていたいじめについての内容を話した。
いじめの加害者の葛城が、一人でいじめの被害者に執拗ないじめを行っていたことと、いじめをやめさせようとするものがいれば、その人物を学校内で付きまとうということ。
「うわっ、陰湿~」
けらけらと砂橋は笑った。
例え、砂橋が学生の頃にいじめられていたとしても、ケロッとした表情をしながらいじめをやり返していただろう。昔から今のような性格だったらの話だが。
「いじめなんて幼稚なことだと思うけど、いじめするのって幼稚な頭だからやるんだよね。だって、意味ないもん。いじめするだけの労力が無駄」
学校内で歩きながら喋る砂橋に「授業中だぞ」と声をかければ、砂橋は声を潜めた。
「頭がいいと頭が幼稚なのは違うもんね」
「砂橋はいじめられても返り討ちにしそうだな」
「いやいや、いじめられたよ。仕方ないからね」
「は?」
砂橋は二階に向かうために階段に足をかける。思わず驚いて、足を止めた俺を不思議そうに砂橋は振り返った。
「どうしたの?」
「いじめられたことあるのか?」
「うん。まぁ、いじめって言うんじゃない?ああいうの。つまらなかったから無視したけど。ああ、でも、本や教科書を濡らされるのは嫌だったから、結局先生に言ってそいつの家まで言って本と教科書を弁償してもらったよ」
「……」
結局自分で解決していたんじゃないか。
昔も今とそう大して変わらないな。俺はため息をついた。いったい、どうして砂橋がいじめられたのかは聞かずとも分かる気がする。顔をあげるといつの間にか踊り場まであがっていた砂橋が俺を見下ろして笑っていた。
「どうしたの?」
「……いや、なんでもない」
俺は階段を上った。




