学校潜入編【22】
「そういえば、詳しく聞いていなかったですけど、今回はどういう経緯でこの学校にいるんですか」
そういえば、軽くは説明したけど、詳しいことはあまり説明していなかった気がする。ていうか、説明した時にたぶん猫谷刑事は僕にスーツを着せるという嫌がらせを考えていたから詳しく聞いていなかったのか。
「この学校ね。弾正の母校らしいんだよ」
「それは聞きました」
「それで、この学校に勤めてる先生が弾正の同級生でね。この前、同窓会の時にいじめの調査を知り合いの探偵に依頼できないかって頼まれたんだって」
まさか、弾正が依頼の話を持ってくるとは思わなかった。
今まで一度も弾正から依頼を持ちかけられたことはない。だから、内心は驚いていたのだ。しかし、蓋を開けて見れば、弾正は友人から相談されただけ。まぁ、そんなもんだろうなとは思ったけど、肩透かしをくらった気分だ。
「思ったんですけど、砂橋さんがいじめの調査を請け負ったんですか?する側じゃなくて?」
「君、だんだん僕に遠慮しなくなったね」
さらっと正直に言葉を発した猫谷刑事に僕は目を細めた。
別に人をいじめた覚えはないのだけど、僕の性格を知る人間からはそう見えることもあるかもしれない。
いや、本当に僕が人をいじめるような人間で、そのようなことをしていると思っていたら、彼はそんなことを口に出したりしないだろう。
要するに、冗談だと分かっているからそう言えるのだ。
「遠慮してほしいんですか?」
「別に?遠慮したければすればいいんじゃない?」
「じゃあ、遠慮しません。今回は何も言いませんが、次からは現場に関わらないようにしてもらいます」
まぁ、猫谷刑事に何を言われたところで右から左に受け流すんだけどね、と思いながら、校長室の扉を猫谷刑事がノックするのを一歩後ろから眺めていた。




