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学校潜入編【18】


 どこの教室に行こうと足を進めている。


 授業に集中している教室の横を一つ通り過ぎると扉のガラス窓越しに二人ほどの生徒と目が合ったので、すぐに目を逸らした。


 案外、恥ずかしい気持ちになってしまうので、授業に集中しているクラスを覗き込むのはやめようと思いながら、そそくさとその教室の前から退散すると足は自然と階段へと向かっていた。


 一階は一年の教室、二階は二年の教室、三階は三年の教室と分かりやすい配置になっている。


「そういえば、七瀬が担当しているクラスは二年二組だったか」


 砂橋と渡辺校長が依頼料のことで相談をしている間、俺は黒歴史の事だけではなく、七瀬のクラスのことを聞いた。


 決して、俺の黒歴史から七瀬の気を逸らせるつもりで話題を無理やり変えたわけではない。


 その時に彼女が二年二組の担任をやっていると聞いたのだ。


 男女ともに十五人ずついる三十人のクラス。七瀬は若い先生ということで、生徒にもよく話しかけられるようで、いじめをするような子はいないはずだと言っていた。


 二年二組の教室へ近づく度に、授業中とは思えない声が聞こえてくるのが分かった。数人の生徒が好き勝手に喋っているような音に思わず、俺は先ほどのことを忘れて、教室の扉のガラス窓から中を覗き込んだ。


 と、同時に俺の前にあった扉が勢いよく開いた。


「え」

「わっ、だれ?」


 目の前にいた男子生徒が目を丸くして、俺の顔を見上げた。すると、教室内に響いていた話し声も収まり、教室にいる生徒のほとんどが俺へと視線を向けた。


「えっ、もしかして不審者?」


「不審者ではない」


 俺の手にはデジタルカメラ。


 しかも、今まさに扉のガラス窓から教室を覗き込もうとしていた。


 不審者に間違われてもしょうがないかもしれないが、取材に来ているのに不審者と呼ばれるのは腹立たしい。


 即答で否を唱えると、俺の目の前の男子生徒は「あ」と声をあげた。


「とりあえず、俺トイレ行くからおじさん、どいてよ」


「……ああ」


 俺はまだ二十代前半の年齢だ。おじさんと言われるような年齢ではない。とても否定したかったが、トイレに行くのを中断してしまったのは俺だ。


 俺はそれ以上は何も言わずに扉の前からどいた。


 教室内からは俺を見定めるような視線が止まない。


「あ、もしかして、取材に来るって言ってた小説家の先生じゃない?」


「あー、そういえば、そんなこと言ってたわ」


 女子生徒の言葉に「なんだー、不審者じゃないのかー」と教室の後ろの方にたてかけてあるバットへと手を伸ばしていた男子生徒がけらけらと笑った。


 物騒だから本当にやめてほしい。


 せめて、防犯ブザーを鳴らす程度に留めておいてほしい。


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