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学校潜入編【13】


「ところで、熊岸警部。今回の死体は生徒って聞いたけど本当なの?」


 熊岸警部は砂橋の質問に眉間に皺を寄せた。


 本来であれば、部外者に捜査の話はしないだろうが、熊岸警部とは短くない付き合いだ。しばらくにこにこと嬉しそうにする砂橋をじっと見つめてから、熊岸警部は重たい口を開いた。


「生徒のようだが、まだはっきりと分かったわけではない」


「分かったわけではない?」


 熊岸警部にしては歯切れの悪い言葉を砂橋は鸚鵡返しにした。


 砂橋と熊岸警部は今までも何度か現場で顔を合わせているし、その度に彼は砂橋が聞きたがる情報を渡し、捜査に協力しようとするのを横で見守っている人間だ。


 それなのに、歯切れが悪い。被害者が生徒かどうかの情報くらい、今更、隠すようなことでもないだろう。


「制服は着てるの?」


「制服は着ている。しかし、頭がな」


「頭?」


「頭部が判別不可能なほど破壊されているんだ」


 一瞬、職員会議室に静寂が満ちた。


 頭部が判別不可能なほど破壊されている死体が中学校の裏庭にあること自体、おかしなことだ。


 普通、中学校では小さな喧嘩は起こっても死体などは発見されないし、ましてや、頭が判別不可能なほどの死体が見つかることはない。


 どうなってるんだ、この中学校は。


「うわぁ、犯人も面倒なことするなぁ……大変だったろうに」


 砂橋の呑気な呟きに俺は頭を抑えた。


「今回は捜査に加わるのか?」


 熊岸警部の言葉に砂橋は悩むかのように顎に手を当てた。


「どうしようかな。弾正には大人しくしろって言われてるし、たぶん、校長先生も僕らを帰らせようとしてくると思うし、まぁ、校長先生とはこの後、話すからその時に聞いてみるよ」


 砂橋の言葉に熊岸警部は黙ってしまった。信じられないものを見ているかのように目を丸くしている。

 俺には彼が目を丸くしている理由が分かる気がする。


 砂橋が事件を前にすんなりと捜査にちょっかいを出すこともなく、帰ると言い出したのだ。


「熱でもあるのか?」


「ないよ」


 熊岸警部の反応ももっともだ。


「体調が悪いのなら、早めに帰られるように言うが」


「だから、大丈夫だって」


 砂橋は熊岸警部の言葉にけらけらと笑うと、振り返って俺を見た。


「まぁ、賭けは僕の勝ちだし、今回の収穫はそれだけで充分だよ」


「熊岸警部、裏庭の工事を依頼されていた業者が来ましたが、彼らには話をしました。工事はしばらく中断するとのことで……」


 ふと、職員会議室の扉を開けて入ってきて砂橋と俺を見つけて顔を思いっきりしかめて言葉を止めてしまった猫谷刑事を見て、砂橋が固まった。


 その顔を見て、俺は思わず口の端を歪めた。


「誰が賭けに勝ったって?」


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