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弾正誘拐編【27】


 いつまでこうしているのだろうか。


 数時間は身体を縛られた状態だ。何度かバイブレーションが鳴っていたり、微かに人の声が聞こえていたスマホからはもうなんの音もしない。


 そろそろ外に出してもらわないと大変なことになるかもしれないと思っていると人の足音が聞こえた。何度か人の足音は聞こえていたし、その度に動かず、黙ってやり過ごしていたが、もはやそんなことは言っていられないだろう。


「弾正、どこにいるの?」


 俺は縛られた両足を壁にぶつけた。上か下か右か左か、どこに蓋か扉があるのかは分からないが、動く足を左にぶつけると固い石の感触がした。大きな音はでない。


 右の壁へと足をぶつけると、ぎっ、と木の板を蹴った時に出るような音がした。そのまま三度ほど叩くと、外の足音はこちらに近づいてきた。


「あーあー、こんなにロープぐるぐる巻きにしてたら、さすがに中からは出れないだろうね。めんどくさいなぁ」


 外から聞こえてくるのは明らかに砂橋の声だ。


 めんどくさいと言う暇があるなら早く扉を開けてほしい。俺は何時間も閉じ込められているんだ。


「三時間か四時間?大変だね。おもらしとかしてない?」


 人権ならまだ保っている。保っているからさっさと出してほしい。


 しばらくしてがさごそと扉の外から音が聞こえ、木の板が軋む音と壁の端から光が差し込んだ。


 眩しさに目を細める。木の壁だと思っていたのは木の扉で、俺が入っていたのは石の壁に作られた棚のような空間だった。


 扉を開けた砂橋は俺を見つけて、にっこりと笑うと白い手袋をつけた手で俺の口へと手を伸ばし、躊躇なく俺の口に貼られたガムテープを剥がした。


「い……っ」

「あ、痛かった?でも、別にいいじゃん。僕に助けてもらえたんだからさ」


 砂橋はそう言うと手に持っているカッターナイフで俺の足を縛っているロープを切った。足が自由になった俺は、棚から足を出して、床の上に立つ。


「なんで俺はこんなところに閉じ込められたんだ?」


「家族の話し合いに巻き込まれたって感じかな」


 俺は眉間に皺を寄せた。縛られた両手を差し出すと砂橋はカッターナイフで俺の手のロープを切ってくれた。


「なんだ、それは……」


「西園寺ホテルグループの会長の西園寺紫吹さんと、娘の薫さんの家族の話し合いだよ。薫さんが連れてきた婚約者の耀太さんとの結婚を認められなくって追い返した紫吹さんが、もう一度話がしたいからこんな回りくどいことをしてまで二人を呼び寄せたんじゃない?」


 砂橋は簡潔に説明しているつもりだろうが、それなら何故俺がこんな窮屈なところに閉じ込められていたのか分からない。


「……今までずっと依頼人と一緒にいたのか」


「うん」


 俺はため息をついた。もしもの時のために、俺達はお互いのスマホのGPS機能が使えるようにしているため、もっと早く砂橋がここに来てくれると思っていたが、依頼人が一緒にいたのであれば、すぐにここに来なかったのも納得がいく。


「……今までの話を順を追って説明してくれるか?」

「トイレ休憩挟んだ方がいいんじゃない?長くなるよ」

「……」

「トイレなら外に出て、左の建物にあるよ」


 俺は砂橋の気遣いに礼は言わずにトイレに向かった。


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