弾正誘拐編【22】
「お父さんが言っていた思い出の場所は、ここで合ってるんでしょうか?」
「むしろ、ここまでお膳立てされていて、間違いでしたはないでしょう」
僕が一枚一枚、アルバムを元に戻していると、耀太さんがテーブルの上の置いたままの写真を僕に差し出してくる。それを受け取って、アルバムへと戻す。
「そもそも、アルバムは背表紙が擦り切れるほど読まれているのに対して、日記の方は買ったばかりのように綺麗です。しかも、写真に合わせたように二十日分の日記しかない」
まるで、この謎解きのために作られたような代物だった。
美樹さんと出会った頃から書いているのなら、少なくとも二十年以上も昔からあるに違いない。そのような日記の内容にも関わらず、わざわざ新しい日記に書き直しているのがおかしいことなのだ。
それに一番気になったことが一つあるが、それはこの屋敷を出る時に確かめればいいだけだ。
「日記とアルバムは見つけられて謎解きをするために用意されたものだと思います。それなら、思い出の場所は愛知民族博物館で間違いないかと」
アルバムに写真を戻し終え、僕はやっと一息ついた。
冷めてしまったミルクティーに口をつける。
ふと、イヤホンを通して、衣擦れ以外の音が聞こえてくる。
『……は……の中心……あり……』
聞こえないわけではないが、聞き取れない録音されたような女性の声。何かの説明のようだ。
「今すぐ、博物館に行きましょう!」
薫さんと耀太さんが立ち上がる。
ここから、博物館までは片道で三十分かかる。
現在時刻は午後一時十五分だ。
博物館の閉館は午後四時。
紅茶も飲んだし、タルトも僕は食べ終わったし、二人に同行するとしよう。
僕は二人に倣って重たい腰をあげた。




