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弾正誘拐編【18】


「初めて美樹と出会った時は、関係がこんなにも続くとは思わなかった」


「美樹って薫のお母さん?」


「ええ、お母さんの名前よ」


 耀太さんの質問のせいでいきなり出鼻をくじかれた薫さんは改めて息を整えて日記の続きを読んだ。


「地図を片手に辺りをきょろきょろとしている彼女を見つけて、思わず声をかけた。何故なら、彼女が背負っている鞄の口が開いていて、今にも中のものが落ちてしまいそうだったからだ」


 どこかで聞いたようだなと思っていると、耀太さんと目が合った。


 そういえば、耀太さんと薫さんの水族館での出会いも同じようなものだった気がする。


「彼女にリュックの口が開いていると声をかけると彼女は何度もお礼を言ってきた。それだけで最初は終わると思っていたが、彼女が地図を片手に何もない小道に入ろうとするので、それを慌てて止めた。どこに行きたいのかを聞くと民族衣装を着たいのだと言う。それならば、そこまで一緒に行こうと提案すると彼女は嬉しそうにお願いしますと答えた」


 リュックは開けっ放しにしているし、地図はちゃんと読めない。なんだろう。たぶん、見ていて紫吹さんもハラハラしてしまったんだろうな。おせっかいだと思いつつも思わず助けたんだろう。


「それから民族衣装の試着ができる場所にたどり着くと、彼女に一緒に着ましょうと誘われた。道案内のお礼に自分が奢ると言うので、一緒に着替えることにした。それが最初の出会いだった」


 旅行先で出会って、関わって、最終的に結婚するなんて人はどれぐらいいるのだろう。


 恋愛話はあまり聞いたことがないし、友人の結婚式というのも招待状には欠席で返事を出しているので見たことはないが、親と子が同じように恋人と出会って結婚する確率というのが低いだろうというのは僕でも分かる。


 きちんと思い出話をすれば、紫吹さんも二人の結婚を認めてくれるんじゃないかとさえ思う。


「この本には、二十日分の日記が書いてあります。最初はお父さんとお母さんが出会って、韓国の民族衣装を着たことが。次は連絡先を交換していたお母さんから一緒に行きませんかと誘われて、自分は着なかったが、お母さんがチャイナドレスを着たのを写真に撮ったあげたと」


 手元のアルバムの最初のページに戻る。一枚目は韓国、二枚目は中国だ。


「じゃあ、三つ目の日記はインド?」


 次のページを捲った薫さんは文字を視線で追うとやがて頷いた。


「はい。インドです。今度はお父さんからお母さんを誘ったみたいです」


「アルバムと日記が連動してるみたいだね。こっちに持ってきて照らし合わせて読んでみようよ」


 僕の言葉に薫さんと耀太さんがソファーまで戻ってくる。


 写真と日記を一ページずつ照らし合わせていく。


 七番目のインドネシアに至るまでは、紫吹さんと美樹さん、どちらが誘ったのかということと何を着たかということしか書かれていなかった。


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