配信殺人と呪われたゲーム【31】
呼び出された蒼梧と来島は困惑した表情で、そばボーロの入った袋を砂橋に手渡した。砂橋は嬉しそうにそれを受け取り、袋を開けると一つ食べる。
「うん、美味しい。お菓子作り、好きなんだね」
「あ、はい……」
いきなり菓子を作って持ってこいと呼び出されるとは思ってもみなかっただろう。
しかも、ここは亡くなった成瀬唯香の住んでいたマンションの前だ。二人にはまだそのことを伝えていないが、来島は怯えたような目をして、少し離れたところで電話をかけている熊岸警部を見た。
「大丈夫だからな」
「で、でも……」
蒼梧が来島の背中を撫でる。
「噛み砕いて説明するね。来島くん。ナユユンこと、成瀬唯香さんはそばアレルギーだったんだ」
来島の顔が青ざめたどころか、白くなり、ふらふらとする彼を蒼梧が慌てて支える。俺は思わず砂橋を睨む。
「でも、安心してよ。成瀬唯香さんは君の作ったそばボーロを食べてない」
「え?」
いきなりの告白にいっぱいいっぱいになっている来島に代わって、蒼梧が目を丸くする。
「腹の中にもそばボーロはなかった。よかったね。君は犯人じゃないよ」
「じゃ、じゃあ……ナユユンさんはなんで……」
「死因はアレルギーによるアナフィラキシーショックだよ」
来島の足から力が抜けていくのを蒼梧がまた慌てて支えた。
蒼梧は来島の手を自分の首の後ろに回した。
「食べてないけど、アレルギーで死んだ。それに、来島くんはファンだから、配信を見てたんでしょう?」
「は、はい……。確かに俺のお菓子は食べてなかったです」
顔面蒼白になりながらも来島は首を横に振った。
「じゃあ、どうしてナユユンさんは……」
それは俺も気になるところだ。
「その話は四階の彼女の部屋に行ってから話そうよ」
砂橋はそう言うと熊岸警部を振り返った。




