配信殺人と呪われたゲーム【22】
「あ、これ、来島が言ってたたまごボーロとそばボーロだ。かわいそうに。せっかくあげたのに全部食べてもらえないなんてね」
砂橋の言う通り、キーボードの隣には透明な袋の中に入っているたまごボーロとそばボーロがあった。オレンジのリボンでラッピングされていたらしく、一度リボンは解かれ、袋は開けられた形跡があった。今は小さなヘアピンで袋は口を塞がれている。
きっとこのお菓子は今後誰にも食べられずに最終的には捨てられてしまうのだろう。
「被害者の死因は?」
「今、調査中だ」
「ふーん」
砂橋は部屋の中を見回す。
毛の長い白いカーペットがテーブルの下に引かれており、同じような材質の緑色のカーペットが小さなテーブルの下に引かれている。白いカーペット周りには学校で使っているらしい本などを収納している腰ほどまでの高さの本棚がある。
「綺麗な部屋だね。真面目ってのも頷けるよ。ほら、テレビとかの裏にも埃が少ないもん」
テーブルやテレビ台の上は埃が気になるから気づいた時に掃除をするということはあるが、テレビの裏まできちんと掃除をしているということは几帳面な性格だったのだろう。
「そういえば、成瀬唯香さんは昨日死んだんだよね?死体ってすぐに見つけられたの?」
「その成瀬唯香から警察に連絡があったんだ」
俺は思わず目を丸くして熊岸警部を見た。砂橋は目を細めた。
続きを話せと言外に促す砂橋に熊岸警部は右手を握って、親指と小指だけを立てて耳元に持っていく。
近頃、めっきり見る機会がなかったが、それが電話をかけるジェスチャーだと数秒後に気づいた。
「昨夜、成瀬唯香のスマホから警察へ一一〇番があったんだ。警察からの質問には答えず、荒い息だけが聞こえた数秒後、人が倒れる音らしきものが聞こえた」
「それで警察が駆けつけてみたら死んでたってわけだ」
「ああ」
砂橋は顎に手を当てると、ちらりとパソコンのモニターを見た。
「熊岸警部。警察官がここについた時、パソコンはついてたよね?誰か消した?」
「そのままの状態だ」
「触っても?」
「下手なことをしなければ」
この場には熊岸警部しかいない。ここに猫谷刑事がいなくてよかったと俺は胸を撫でおろした。