配信殺人と呪われたゲーム【19】
砂橋が両手でタルトの入った箱を持ってきて、事務所内のテーブルへと置いた。
「それで?できませんでしたで終わりじゃないでしょう?」
「はい。実況者ナユユンについて調査しました」
笹川がキーボードを叩いて、マウスを動かすと程なくして砂橋は自分のスマホを見た。どうやら、笹川が情報を砂橋のスマホに送ったらしい。
「実況者ナユユン。本名は成瀬唯香。一人暮らし。光が丘大学文学部三年生の二十一歳の女性です。彼女はナユユンの実況部屋というチャンネルで毎週生配信をしていたみたいです。平日は大学の授業が終わった後、スポーツジムの受付のアルバイトをしていて、大学では映像研究会という同好会に所属していたみたいです」
砂橋はキャラメル味のチーズタルトを片手に持つとその三分の一をかじった。笹川の邪魔にならない位置から彼の顔の前の画面を俺も見る。
どうやら、ネットではもうすでにナユユンの個人情報が駄々洩れらしい。笹川のことだから情報の裏を取ってから砂橋に話しているのだろう。
俺もスマホを開いて、掲示板サイトにアクセスしてみる。すぐに実況者ナユユンについて自由に書き込みされているサイトが見つかり、他人の書き込みを眺めてみる。
先ほど笹川が言った情報もあるが、それとは違う情報もある。
「週五でバイトしてて、毎週配信してた……結構真面目な子なのかな」
「そうみたいです。バイト先のジムに電話をして聞いてみましたが、無断欠勤など一度もしたことがなく、とても真面目な人物だったそうです」
笹川の言う事が本当だろう。
ならば、掲示板の書き込みでたまに見かける「パパ活」「実は付き合ってた男がいた」「男関係にだらしなかったのでは?」という書き込みは第三者の悪意のある書き込みだろう。
もしかしたら、悪意などなく、軽い気持ちで行っている書き込みかもしれないが。