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配信殺人と呪われたゲーム【16】


「早速本題ですけど、どうして、来島くんの呪われたゲームを渡したんですか?」


「来島から聞いてないの?私のこと」


「友達だからって日常生活について全部知っているわけじゃないです。しかも、今の来島から話を聞こうにも、あまり要領を得ないので……」


「……そりゃそうよね。あいつはナユユンの大ファンだったし」


 真鍋はため息をついた。


 彼女は来島がナユユンの大ファンだということを知っていて、彼にナユユンにゲームを渡すことを任せたのか。


「やっぱり、知ってるんですね」


「私は配信を見てないから知らないけど、今朝起きたらネットで大騒ぎされてたわ……。私のゲーム制作用のアカウントにもいくつもDMがきててびっくりしたのよ」


 ナユユンは彼女の作った「呪われたゲーム」をやっている最中に死んだのだ。面白がった人間が彼女に話を聞きたがるのも当然だろう。しかも、それがネット上のやり取りであれば、簡単にできる。さすがに、ネットでちょっかいをかけてくるような人物がこんなに早く自宅にまでやってくるとは思わなかったのだろう。ましては来島の名前を出しているのだ。


 俺と砂橋は来島の友人として振る舞わなければならない。


「それは、大変ですね……。実際、あのゲームを作っていた時に怪奇現象とかは起きましたか?」


「まったくと言っていいほど起きなかったわよ」


「そうですか。今ゲームのデータを持っているのは、来島くんから受けとった僕と、亡くなったナユユンさんと、制作者の真鍋さんということでいいですか?」


「ええ、その三人だけよ。ネットにも公表してないんだもの」


 なるほど、と砂橋は何度か頷いた。砂橋はぽちぽちとスマホの画面を叩いているふりをしている。隣に座っている俺からは見えているが、スマホでメモをとっているように見えて、ボイスレコーダーで会話を録音している。


「どうして、今回ナユユンさんにゲームを渡すことになったんですか?」


「……彼女はずっと私のゲームをやってくれていたのよ。配信や動画で。今まで私のゲームを取り上げてくれる実況者がいなかったの。だけど、ナユユンだけは私が新しいゲームを出す度に実況してくれたの」


 他の人物が取り上げていない自分の作品をたった一人だけが取り上げて、その後も作品を発表する度に取り上げてくれるというのはどういう気持ちだろうか。


 俺だったらとても嬉しいかもしれない。感謝してもしきれないだろう。


「だから、今回、公表する前にナユユンに先行配信してほしかったの。ナユユンが実況してくれるようになってから私のゲームを実況してくれる人もちらほら増えてきたから……先にナユユンにやってほしくて……」


 その気持ちは分からなくもない。


 今まで支えてくれた人に真っ先に自分が作ったものを見てほしいと思うのは自然なことだろう。


 俺の場合、砂橋には内緒で書いているミステリー小説があるが、砂橋に知らせないまま協力してもらっている小説を読んでほしいという衝動に駆られることはたまにある。絶対に読ませないが。


 もちろん、砂橋と体験した事件のことをそのまま書いているわけではないし、登場人物も全員設定などを新しく作っている。しかし、トリックなどが俺が砂橋と共に体験した事件に似ているので、砂橋が俺の本を書店で手にとらないことを祈るばかりだ。


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