配信殺人と呪われたゲーム【15】
近くの喫茶店はビルとビルの間に挟まれた狭い喫茶店で、その狭さを改善するためか二階にもテーブル席がある店だった。
真鍋はその店に入るとアイスカフェモカのみを頼み、ばらばらの小銭をトレイの上に置いた。彼女が差し出したレシートを受けると店員は「お次のお客様」と砂橋を呼んだ。
しかし、砂橋は一人で店員の前に行くのではなく、俺の袖を引っ張った。見てみると自分の財布を出していない。
俺はため息を吐きながら、自分の鞄から財布を取り出して、砂橋と一緒に受付へと近づいた。
「じゃあ、僕はアイスルイボスティーで」
「俺はアイスコーヒーを……」
砂橋のルイボスティーの分の支払いも同時に済ませて、飲み物を受け取る頃には、すでに真鍋の姿は一階の客席にはなかった。
俺が財布を鞄にしまっているうちに砂橋がアイスコーヒーとアイスルイボスティーをのせたお盆を両手で持ち上げて、二階への階段に足をかけていた。
ケーキがあるのに頼まないということはそこまで真鍋との会話を長引かせるつもりはないということだろう。
それもそうだ。
来島宅でしていた熊岸警部との電話のやり取りから察するに、この後は事件現場であるナユユンの家に行くのだから。ここで長話をする気はないらしい。
真鍋は二階の一番奥のソファー席に座り、すでにアイスカフェモカを三分の一程飲んでいた。真鍋の方も俺たちと長い間、会話をするつもりはないみたいだ。




