配信殺人と呪われたゲーム【13】
「ずいぶんと疲弊している人間の前で煽るようなことを言っていたな」
車に乗り込んだ俺は砂橋にそう言った。砂橋は肩を竦める。
「自分が犯人かどうかも分からないなんておかしいよね。しかも、呪われたゲームを渡したからだなんて、笑っちゃうよ」
俺はため息をついた。
「それで、どこに行くんだ?真鍋成美のところか?」
「うん。そこでお願い」
俺は先ほど来島から聞いた住所を車のナビに打ち込んで、出発した。
来島の家から車で十五分のところに、木造建築の二階建てのアパートがあった。教えてもらった住所ではここの一階の一〇三号室に住んでいるらしい。
一階には五つほど扉が並んでおり、そのうち三つの扉の郵便受けには地方紙らしきものが突っ込んであった。
表札は出ていないがそれを砂橋に教えると、砂橋は躊躇なく、インターホンを押した。しばらくの間、誰も反応しなかったが、砂橋はもう一度インターホンを押した。
「真鍋さーん。来島くんからデータを預かってきましたー」
今度は一分と経たないうちに鍵が開く音がした。
扉は開いたもののチェーンロックがかかっており、開いた隙間から女性が顔を覗かせていた。
「……だれ?」
「僕、来島くんの友人の砂橋って言うんですけど、来島くんが真鍋さんのゲームをやってからなんだか怪奇現象に悩まされているみたいで……たぶん、精神的なものだと思うんですけど、ゲームのことについて色々と教えてもらえませんか?」
よくもまぁ、こうすらすらと嘘が吐けるものだ。
扉の隙間から顔を覗かせている真鍋成美は髪は整えているものの着ているものはジャージの上に半纏だった。そして、足元には踵を履きつぶしたスニーカーがある。
「……来島が?そういうのって病院に行った方がいいんじゃないの?」
「本人は呪われたゲームのせいだって言い張ってて外に出ようとしなくて……少しでもゲームのことについて調べて、こういう解決方法があるって信じさせることができれば、外に出てくれて、病院にも連れて行けるかなって」
しばらく、真鍋は砂橋の顔をじっと見ていたが、彼女は次に俺の顔を見た。
「そっちは?」
「彼は僕の従兄弟で、今回車を出してもらってたんです。僕は自分の車を持っていないもので……」
真鍋は砂橋と俺の顔を交互に三度程見て、ため息を吐いた。
「だから、来島から着信があったのね。分かった。支度するから……近くのコインパーキングに停めてるんでしょ?駐車場で待ってて。喫茶店で話しましょう」
「分かりました」
真鍋は砂橋の言葉を聞き終わらない内に扉をばたんと閉じてしまった。砂橋はくるりと振り返ると駐車場へと向かった。
 




