配信殺人と呪われたゲーム【6】
蒼梧はテーブルの上にスマホを置いて、砂橋に差し出した。画面には友人である来島一成とのメッセージのやり取りが表示されている。
『大丈夫か?お前が好きだって言ってた実況者が亡くなったって聞いたけど……』
『蒼梧……俺、やったかもしれない……』
『え?』
『さっき、俺のところに警察が来たんだ……。俺、俺、もしかしたらナユユンさんのことを、殺しちゃったかも……』
その後は、蒼梧から来島一成に電話した形跡だけが残っていた。通話は一時間ほどしていたらしい。
「警察は一成に詳しいことは話さなかったらしいんですけど……どうやら、心臓発作とか病気ではないっていうことだけ聞いたみたいです。でも、それからは話にならなくて……落ち着かせた後に熊岸さんに電話したんです」
「熊岸警部ならあんまり教えてくれなかったでしょう」
砂橋がお茶を口に含むと、蒼梧も真似をするようにお茶を口の含んだ。
「はい。話してくれなかったです。でも、どうにかしたいのなら砂橋という探偵のいる探偵事務所に頼るといいって言われて住所を教えてもらったんです」
まさか、熊岸警部が砂橋にわざわざ依頼するように人に言うとは。
今までたまたま砂橋や俺が事件現場に居合わせた時に熊岸警部は俺たちの行動に目を瞑ったりしていたが、直接熊岸警部から頼られることはなかった。
本当に熊岸警部は砂橋に頼れと蒼梧に言ったのか。
砂橋の性格を承知している上で、知り合いに紹介するなどということをするだろうか。俺だったら絶対にしない。あとで、俺から熊岸警部に聞いてみよう。
「……探偵事務所の前にその来島くんのところに行かなかったの?」
「行きましたよ。でも、今は外に出たくないと言っていて……砂橋っていう探偵事務所に行くとは伝えましたけど」
砂橋はうんうんと頷いてから、にこりと笑った。
「来島くん、自分が犯人じゃないかと思い込んだ挙句、自殺してるかもしれないね」
俺は思わず、砂橋の口を抑えた。しかし、一言も止めることはできずに、目の前の蒼梧の顔はみるみる内に青ざめていった。
「砂橋……」
「弾正、車出してよ。来島くんのいるところに行こう。笹川くんはできるだけ件の生配信とか死んだ女性について調べておいて」
「分かりました。可能な限り調べておきます」
笹川は軽快にキーボードを叩き始めた。俺は砂橋が座っていたソファーの端に置かれていた自分の鞄を取り上げた。