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配信殺人と呪われたゲーム【1】


 画面はきちんと映っているかどうか。マイクに声はきちんと入っているかどうか。概要は間違っていないかどうか。


 何度かパソコンの画面を確認して、一度大きく息を吐く。


 そして、配信開始のボタンをクリックする。


 視聴者数が表示される場所を確認しつつ、画面の確認とコメント欄を画面上に表示させるための手順をつつがなく終了させる。次はSNSで放送開始の旨を放送のURLと共に告知する。


 終わる頃には、視聴者数を表す数字が零から三に増えていた。


「こんにちばんわ~。ナユユンだよ~」


 画面右下に映っている私が鏡のように右手を軽く振る。笑顔はいつも通り問題ない。


 毎週土曜日の夜の十時から行っているゲームの実況配信。


 一年ほど前から毎週欠かさずやっていたおかげで登録者数は千人くらいになった。それでもやっぱり、土曜日のこの時間には他の有名実況者も配信をしていて私に配信を見に来る人数も多くはない。


 それでも私の配信に来てくれる人のためと、何より私が楽しむためにゲームを開始する。


「今日は私がいつも新作が出る度にゲームを実況させていただいたMANABEさんが私のためにゲームを作ってくれたらしいので、そのゲームをやっていきたいと思います!」


 もらったUSBに入っていたゲームを起動させる。

 黒い画面に白く、少し歪なフォントが現れる。


「呪われたゲーム……?MANABEさんの今までの作品は閉じ込められた場所からの脱出だったりが多かったんですけど、今回のは全く中身が想像できませんね!早速スタートしていきたいと思います」


 スタートボタンを押す。


 呪われたゲームという題名がついているから、もしかしたらホラーゲームかもしれない。今までMANABEさんのゲームはホラー要素があまりなかったけれど、今回は違うんだろうか。


 もし、ゲームプレイヤーをびっくりさせるような要素があったら、私は素直にびっくりしてしまうかもしれない。


 実は怖いのは苦手だったりする。


 でも、わざわざゲーム制作者であるMANABEさんがずっと実況をしてくれている私のためにと送ってくれたんだ。実況しないわけにはいかない。


「このゲームの主人公は、この子かな……。あ、名前!ナユってなってる!私のために作ったゲームってこういうことだったのかな!えー!私がゲームの主人公になってる!すごーい!」


 ホラーゲームだとしても、主人公が最初から自分の名前になっているのはわくわくしてしまう。滅多にない経験にゲームを進める。


 このゲームの主人公は、私だ。

 ナユユンとして、ゲーム実況をしながら生活をしている女性。


 ゲームの中の設定だとOLになっているが、現実の私は大学生だ。訂正はしないし、配信では言及しないけれど。


「実はですね、今回、このゲームのデータをもらった時に手作りのお菓子ももらったんですよ!たまごボーロ好きなんですよね。ずっと食べていられるあのサクサク感がたまらないですよね」


 そんな話を挟みつつ、呪われたゲームを進めていく。


 話のおおまかな内容は主人公の自宅に黒い包み紙に入ったUSBが送られてきて、中身にはとあるゲームのデータが入っていたというものだ。


 ゲームのクリアを目指している主人公の周りで不可解な出来事が起こり始める。


「あー、また死んじゃいました!選択肢がたくさんあって難しいですね……どうやったら生き残れるんでしょうか……」


 いつの間にか、配信開始してから四十五分も経過していて、視聴者数は四十八人程になっていた。

 今日は視聴者数がいつもより多い。


 たぶん、それはゲーム制作者が私のためだけに作ってくれたゲームをプレイしているという珍しさからだろう。


 ゲームが上手いわけではないけど、いつかもっと視聴者が増えたらいいなとは漠然に思っている。でも、今はただ見てくれている人達のために楽しい配信にしたいし、私もゲームを楽しみたい。


「よぉーし!生き残れるまで今日は配信を続けますよー!」


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