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三つのチョコ【6】


 視界の端に三つのチョコの箱がある。


 黒い箱に白いリボンのチョコ。

 赤い箱に白いリボンのチョコ。

 青い箱にオレンジ色のリボンのチョコ。


 砂橋は生チョコパフェに夢中でこの三つのチョコにはもうすでに目もくれていない。


「それで、弾正さんはそのチョコを置いていった人物を探しているわけですね」


「俺がというよりは紙袋ごと砂橋が持ってきたから持ち主に返そうと思ってる」


 面倒事に自分から首を突っ込んでいった砂橋は、しばらく生チョコパフェから帰ってこないだろう。


 となれば、俺がこの箱について考えなくてはいけないのだが。


「差出人を見つけたいのであれば、メッセージカードなどに名前を書いていたりしませんか?」


 マスターの言葉に俺は一番手前にあった白いリボンが巻かれた黒い箱を手にとる。恋などを連想するバレンタインデーのプレゼントに黒と白の包装を初めて見た。


 少し箱を持ち上げてみるとリボンの重なっている部分に真っ黒なカードのようなものが挟まっているのに気づく。


「これか?」


 少し気が引けたが、無理やり抜き取るのも無理そうなのでリボンを解いて底に隠れていた二つ折りにされた黒いカードを開く。


 白いインクでただ一言、「食え」という荒々しい文字が書かれていた。


 思わず固まった俺の手元をマスターも見てしまって「これは……」と言葉を失っていた。


「……バレンタインデーのチョコ、だよな?」


 何か呪いの品物とかそういうわけではないはずだ。

 まさか、爆弾のようなものが入っているわけでもないだろう。


「食え、というメッセージからして食べるものだとは思いますが……一応確認しておいた方がいいかもしれないですね」

「そうだな……」


 ここまで来たら確認するしかないだろう。


 もし、自分の予想を越えるものが入っていたら、速攻で交番に届けよう。


 そもそも、何故俺はこの忘れ物を交番に届けなかったのか。早くも後悔を胸のうちに抱えながら、俺は箱を開いた。


「……チョコ、だな……」

「ちょっと待ってください。これって……」


 正方形の箱の中には四つチョコが入っていた。ハートや丸の形が二つずつ。仕切りがちゃんとしてあり、それぞれがきちんと並んで入っていた。


 きっと市販の板チョコなどを溶かしてから型に流し込んで固めたのだろう。


 しかし、その工程だけでは決して入らないようなものがチョコからはみ出していた。


「……髪の毛?」


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