四楓院苺事件【1】
最近、気になっていることがある。
「また、並んでるな……」
弾正景虎と書かれている本が並んである店頭の隣に、前見たものと同じ名前が並んでいることに気づいた。俺の暗い装丁とは打って変わって桃色と橙色の明るい装丁に、その明るさに似合っているのか定かではない「四楓院苺」という文字。
作者の名前であることは明白だ。
前に俺の小説が発売された時、おすすめとして本屋に入ってすぐの棚に並んでいるその横に必ず「四楓院苺」の本があった。
試しに手を取ってみると、俺が出している出版社から出ていた。しかし、四楓院苺という人物には出版社開催の立食パーティーでも出会ったことがない。
見出しには「千年に一度の純愛!」などと書かれていることからジャンルは恋愛だろう。本を開いてカバーを見てみる。最後のページの次、カバーの折り返しにはたいてい作者の履歴などが載っている。
「……俺と同じ大学。同じ年にデビュー?」
接点が高いにも関わらず、今まで会ったことがないどころか、存在すら知らなかった。
もともと、ここにやってきたのは資料に使えそうな本でも探そうと思ってきたのだが……。
俺は四楓院苺の小説「岬百合」を購入した。砂橋に頼まれていた恐竜図鑑も買って、その足で砂橋の探偵事務所へと向かった。




