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探偵のオペラ【20】


「え、着替えてきてもいいの?」


 もう一つの女性役であるアンネを演じていた陽葵がきょとんと丸くした目を史也に向けた。


「ああ。君もいつまでもコンタクトだと辛いだろう?眼鏡に替えてきて大丈夫だよ」


「よかったわ。目薬をさしたくても控室にあったからそろそろ刑事さんに相談しようと思ってたの」


 陽葵は大きく息を吐きだすとパイプ椅子から立ち上がった。


 他に女性の役者はいないため、控室に向かったのは愛梨と陽葵だけだった。


 役者ではない女性が観客席の最後尾のさらに後ろの壁によりかかって、ぼーっと舞台を見ていた。彼女が先ほど聞いた音響を担当している月島祈だろう。肩より三センチほど下まで伸ばした黒い髪に濃い色の化粧を一切ほどこしていないように見えて、実は整えられている肌。ネイルも何もしていないが形が綺麗に整えられた爪をしていた。


「彼女が?」


「そう。月島祈。俺と桔平と祈は大学時代の同期なんだ。弾正くんと風斗とは違う大学だけどね」


 傍にいた史也に問うと彼は頷いて、観客席の後ろにいる祈に向かって軽く手を振った。それに彼女が気づくと「こっちこっち」と近くの人間に話しかけるような音量の声をかけながら祈を手招いた。


「どうしたの、史也」


「紹介し忘れてたと思って。この人は弾正くん。風斗の演劇サークルでの先輩で小説家なんだ。こちらの砂橋くんは弾正くんの友達だよ」


「よろしくお願いしまーす」


 砂橋がにこにこと微笑むのに対して、祈は一切微笑むことをしなかった。


「よろしく」


 いつの間にか、砂橋は手袋を外しており、祈は差し出された砂橋の手を握り返した。手が握られたのは数秒だけだった。俺は手を差し出していなかったので祈が俺と握手をすることはなく、彼女はさっさと定位置である観客席の後ろへと戻っていった。



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