第5話 お肉を食べたい私は無心で肉を食べました。
評価、ブックマークありがとうございました。
創作の励みになっております。
「あれ?ゴルゴリ様は?」
飴を渡して泣き止ませながら私はメイドさんに聞く。
「後ろに居ますよ?」
私が後ろを向くとしゃがみこんで動かないゴルゴリ様がいた。
しゃがみ込むっていうより、跪いてる?のが近いかもしれない。
「申し訳ございません。騎士としてあなた様を守るべき行動をとるべきにも関わらず、どうかこの身一つでお許しください。家族には……」
えー、何言ってんだこいつ。
「私が勝手に二人のそばを離れただけですので気にしないで、あと2人にはこんなに心配させてしまいましたし、ほら手を出して。」
ゴルゴリ様の手の上に飴を置いた。
何だこれ?という顔をしていたので説明する。
「飴ちゃんだよ。袋の中に入ってるから開けて食べてみて、」
袋を開けた騎士は恐る恐る飴を口の中へ入れた。
メイドさんの時の流れを見ているようだ。
顔を綻ばせている、ゴルゴリ様のどこからか出てきた可愛い耳がピクピクと動き尻尾がフルフルと揺れている。
モフってしたい衝動を抑える。
確かゲームでは番以外にそういうことをしたらいけなかったような気がする。
私はフォル君をモフモフするんだ!
「ハッ!申し訳ありません!はしたない姿をお見せしてしまいました……。本当に申し訳ありません!」
必死に耳と尻尾を押さえつけて引っ込めようとしているゴルゴリ様に私の頭にハテナが浮かぶ。
「なぜ、はしたない姿?耳と尻尾の事?」
ゲームでは出てこなかった情報だ。
ゲーム中で獣人は耳と尻尾を出しっぱなしだったし……。
「もしかして知らないのですか?」
知らないも何もこの世界のことはゲームのことしか知らないからな。
慌てるゴルゴリ様に頼む。
「教えて」
「私が教えます。」
メイドさんが答えてくれるようだ。
本当はゴルゴリ様本人に聞きたかったんだけど、まあいっか。
立ち話はアレなので昼ご飯も兼ねて近くの料理屋の個室に入った。
居酒屋っぽいけどメニューにはそれ以外の飲み物も載っているので取り敢えずりんごジュースと串焼きとステーキを頼んだ。
多分前の世界での近いものの名前に翻訳されてるんだろうなと思いつつ料理を待つ。
メイドさんとゴルゴリ様もそれぞれが食べたいものを注文していたので良かった。
私だけ食べてたら何だか申し訳ないからね。
「以上でよろしいでしょうか。それでは失礼します。」
店員さんがそう言って全員分の料理を持ってきてお辞儀をしその場を立ち去る。
「いただきます。」
私が串焼きを食べ始める。
「それでは獣人についてご説明いたしましょう。キヨミ様はそのまま聞いてくださったので構いませんよ。」
串焼きの肉をモグモグしながら話を聞く
「あれは数十年前、人間と獣人の間で戦争が起きました。獣人は誰しもが圧倒的な身体能力を持っていましたが数と戦略の差により敗北をしたのです。それからです。人間は獣人を『魔族の失敗作』として迫害するようになりました。その身体能力の高さは生まれ持っての力ではなく魔族の血が流れているからだと……。」
「違う!俺たちはそんなんじゃない!」
メイドさんの言葉に被せてゴルゴリ様が叫ぶ。
個室を選んで正解だった。
「大体分かりました。それでは次の質問です。魔族とは何ですか?」
私は串焼きを食べながら次の質問をする。
やはりメイドさんが説明してくれた。
「魔族とは、人間、獣人、エルフ、ドワーフ以外の牙、ツノ、羽が生えた存在です。数々の悪行を行う諸悪の根源です。魔物を統べるものとも言われています。実際に大抵の魔物は魔王の指示に従って生きています。」
「ふーん、それってさ魔族も結局は獣人と一緒じゃない?」
「な!お前もそう言うのか!俺たちは魔族のような下劣な存在ではない!」
ゴルゴリ様に胸倉を掴まれ持ち上げられる。
オワッ!何してくれる!肉が落ちるところだったじゃないか!
「じゃあ、問題です。魔族の赤子にあなたが出会いました。貴方は赤子をどうしますか?」
「そんなもの切り捨てる!」
「はい、ブッブー。不正解です。それは貴方がされて嫌なことでしょう。魔族といえど赤子、まだ何も悪いことはしていません。生まれた瞬間から悪だと決めつけられた人間は悪としてしか生きる道がないのです。魔族だから殺される自分と違うから殺されるこれも立派な迫害です。獣人は悪い!と言われて貴方は困っている。それなら尚更そういうことを言ってはいけないのです。分かりましたか?」
やっと腕の力を緩めたので私はステーキに手を伸ばす。
う、美味い!
「人間の団結力とは、最終目標があるからこそ存在するのです。それはいい意味でも悪い意味でも、貴方は今日それを理解しました。例えば自分が襲われたとして少しは客観的に見るのも大事です。まあ、それで死んだら元も子もないので死なない程度にそういう人たちを助けていきましょう。騎士?とは人を守るための存在でしょう。ふぅ、ごちそうさまでした。あれ?二人とも、早く食べないと冷めちゃいますよ。」
私が食べ終わったにもかかわらず二人の食事はほとんど残っている。
もしかして私ちょっとがっつき過ぎた?
二人が食べるのを見ながら私はもう一個質問があるのを忘れていた。
「耳と尻尾ってどうやって引っ込ませてるんですか?」
「気合。」
帰りの店内に獣人の姿があるのを見て、ここってこんなに多かったっけ?と疑問に思ったのは私だけではないはず……。
・・・・・・
自分の部屋に戻った私は、オシャレな仮面を棚の上に飾った。
これは、フォル君と初めて会話した記念!
その日の飲食店での出来事がこの国中に広がっているのを知ることになるのはまた別のお話。