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とある世界の、とある国の、とあるお話

とある世界の、とある国の、とある魔女の話

作者: 下菊みこと

とある世界の、とある国の、とある魔女の話

私達の生きるこの世界とは違う、どこか遠く遠くの世界のお話。


どこか遠くの国にある、どこか遠くの村に魔女がいました。


魔女は無から有を生み出せる稀有な魔女です。それに予知夢も見られます。さらにはどんな怪我や病気も治してしまえるすごい魔女でした。


でも、それを村人のために使ったことは一度もありません。だから魔女は、村のみんなから疎まれていました。


でも、村人達はそれも仕方ないとも思っていました。何故なら、村人達もまた魔女を助けたことがないからです。


魔女が、多すぎる魔力を持っていたせいで親から持て余され、この村に捨てられた時も。何も持たない魔女が生きる為に必死に無から有を生み出し、魔力不足に陥って高熱を出した時も。村の誰も、魔女に手を差し伸べてはくれませんでした。


だから村人と魔女の仲はとても悪く、誰も魔女に近づこうとはしませんでした。一人の青年を除いて。


旅芸人のフレデリックは、旅の途中でよったその村で、魔女に一目惚れしてしまいました。だから、誰も魔女に近づこうとも助けようともしないことに憤りました。そして彼は村に住み着き、魔女との交流を図りました。


魔女は最初、彼を拒絶しました。親に捨てられ、村人達にも見捨てられた彼女は人間不信に陥っていたのです。ところがフレデリックは毎日毎日魔女を訪ねてきてはお節介を焼きます。


ある日魔女はフレデリックに尋ねます。どうして私に優しくするの?村人達にも疎まれるのではないの?と。


フレデリックは答えます。村人に疎まれるのはどうでもいい。僕は君が好きでここにいるんだから。君が好きだから優しくするんだよ。


親からも村人達からも疎まれてきた魔女は、その言葉に涙します。そしてその日から、魔女とフレデリックの距離は縮まっていきました。


それからしばらくして、魔女は夢を見ました。村が飢饉によって崩壊する夢でした。魔女は最初ざまあみろと思いました。誰にもこの夢を話す気はありませんでした。でもふと思います。この予知夢を放置したらフレデリックはどうなるのかと。魔女は初めて、自分の力を村人達のために使うことにしました。


魔女は予知夢の話を農家のジョセフに話します。ジョセフは驚きました。そんなまさか、今のところ畑の様子も変わりないのに、と。それでも魔女は無から有を生み出す魔法を使って、沢山の保存食を生み出し、ジョセフに預けました。もし予知夢が外れたらそれは好きにして構わない。もし予知夢が当たったらそれを村人達で分け合って欲しいと。


そして魔女の予知夢は当たりました。飢饉が起こりそうになりました。でもジョセフが魔女から受け取った保存食で、なんとか飢饉を乗り越えられました。村人達はみんな魔女にお礼を言います。魔女はなんだかくすぐったい気持ちになりました。フレデリックはそんな魔女を愛おしそうに見つめます。


それからしばらくして、魔女はまた夢を見ました。今度は疫病が村に蔓延する夢でした。魔女は靴屋のエーミールにその夢を伝えました。そしてそれを防ぐための魔法を村人達にかけたいと相談しました。エーミールはすぐさまそれを村人達に伝えました。魔女は村人達から承諾を得てすぐに魔法をかけました。


そして魔女の予知夢は当たりました。近くの村で疫病が蔓延しました。でも魔女の魔法のおかげで、魔女の住む村では疫病にかかる人はいませんでした。それに、フレデリックの助言により、魔女は近くの村の患者さんを治してあげました。みんなが魔女にお礼を言います。魔女はなんだかくすぐったい気持ちになりました。フレデリックはそんな魔女を愛おしそうに見つめます。


そんなある日魔女は夢を見ました。フレデリックとの間に子供が出来た夢でした。でもその夢は幸せな夢ではありませんでした。何故なら、フレデリックに恋した少女が魔女を妬み、お腹の子供ごと魔女を殺すという恐ろしい夢だったからです。魔女は急いで、魔法でお腹に赤ちゃんがいるかどうか調べます。


赤ちゃんはすでにお腹の中にいました。魔女は赤ちゃんを助けるために、誰にも何も言わずに近くにある迷いの森に逃げこみます。迷いの森はその名の通り、一度入ると出られないと言われる迷路みたいな不思議な森です。更に大気中にたくさんの魔力が含まれるため、魔法の力で迷路を抜け出すことも叶いません。でも、その方が魔女にとっては好都合でした。魔女は元々もう家に帰るつもりはありませんでしたし、誰も追ってこられない場所の方が安全だからです。


迷いの森に逃げこんだ魔女は、まず無から有を生み出す魔法でお家を作りました。そしてそのお家を管理する使い魔を生み出しました。普段ならこれだけで魔力不足を起こしてしまいますが、ここは迷いの森。大気中にたくさんの魔力があるので魔女の魔力もすぐに回復しました。そうして魔女は畑を作り、養鶏場や養豚場を作り、それを管理する使い魔を生み出し、生活の基盤を整えました。


迷いの森は、たくさんの動物達の話し声でとても賑やかでした。森の木々は囁き合い、澄んだ水の音がよく聞こえました。朝には太陽が温かく包み込んでくれ、夜には星の雨が降りました。魔女は森の動物達ともすぐに仲良しになれました。迷いの森はとても素敵な場所なので、きっと産まれてくる赤ちゃんも気にいるはずです。


そうしてしばらく経ったある日、お腹が痛くなりました。陣痛です。使い魔達や森の動物達が見守る中、無事に可愛らしい双子の赤ちゃんが産まれました。一人は男の子で、一人は女の子でした。産湯を使い、布に包まれた可愛い双子の赤ちゃんを見て、魔女は泣きました。二人ともとてもよくフレデリックに似ていたのです。中性的な綺麗な顔立ちも、綺麗な金の髪も、綺麗な緑色の瞳も、全てフレデリックから受け継いだものでした。魔女は泣き止んだ後、魔法の力で体力を回復するとすぐに双子を抱きしめました。そうして、大切に大切に双子を育てました。


それから何年か経ちました。双子は立派に育っていました。魔女から受け継いだすごく多い魔力もきちんと使いこなせています。また使い魔達や森の動物達ともとても仲良しです。もちろん自分の片割れともとても仲良しです。愛する双子と仲良しな使い魔達や森の動物達に囲まれて、今日も魔女は幸せに暮らしています。

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― 新着の感想 ―
[一言]  ちょっと、悲しい物語でしたね。  ハッピー・エンドに思えないのは、私が子供を持つ人間ではないかも(苦笑)  うん、でも、これを幸せな終わりかたって言ってしまうことじたいが、なんだか悲しい…
[一言] 無理に詩を書こうとしなければ、良いと思いますよ。 私の詩集も書き上げるのに、とても長い時間がかかってます。 本当に書きたいと思った時にしか私は書きません。 無理に書けば、 飾った言葉ばかりに…
[良い点] この透明感……いいなあ [一言] 詩にストーリーは要らない。現実や妄想やお話から、エキスだけをきりとりましょう。  小説と同じで、詩をたくさん読みましょう。私は萩原朔太郎が好きです。
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