バイバイ
「無理・・・無理っす。」
僕の口から、思わずそんな言葉がこぼれ出た。
つきみは一旦立ち止まって、こちらを見た。
(なんか、やばいこといっちゃったかな)
と思いながら、これは思ったことであり、事実なのだ。
こんな地球社会に適応しないファンキーな存在をどうやって教育せよと・・・。
月から来たんだったら、月社会でなんとか頑張ってもらった方がいいんじゃないか。
地球への適応は、正直、結構難しい・・・かな、と。
えと、そう、
頭が、ある一面に関してはすごくいいのはわかるけれど、
別の一面でえっと、その、社会‥性、とか、
地球社会でうまくやっていく術を教えるのは、、、正直キャパオーバーかな、と。
せっかく、わざわざ長い距離かけて月から来てもらったにもかかわらず申し訳ないんっすけど。
いや、はい、あの、その・・・
月とか、あの、宇宙のほうが、僕たち地球よりも文明とか、思考回路とか、技術とか、自由とか愛とかそういうのが進んでるっぽいことは何となく想像つくんですけれど、
まあ、ここ、地球なんで・・・。
すみません。
力不足で。
つきみは、黙って聞いていたが、
「そうだよね。わかった。」
といった。
つきみのパパらしき声も、天から響いてきた。
「・・・そうですか・・・本当にうちの子がご迷惑をおかけしたみたいで、、、申し訳ございませんでした。
これからは、どこかあった星に生かせたいかな、と思います。」
「ありがとう。バイバイ。」
そういって、つきみはガラスの扉をあけて、出ていき、そのまま月の光とともに天に引き上げられていった。
僕は、「ふう」とため息をつきながら、ここ数日の小さな出来事のことを振り返って、
そして、その結果こう判断した。
「正しい選択をした」
と。
月から来たということは非常に珍しく希少性のあることであり、
そこから物語が紡がれる可能性は大いにあるだろう。
それに彼女は、あまりにもファンキーすぎたから、エンタメとしても、注目度としても非常に高い。
しかし、現実問題として、僕は彼女を受け入れることができなかったし、
このままあの関係を忍耐して長引かせたとしても・・・破綻に至るほどの負担であっただろうと思う。
人生においても経営においても、「損切」をするということは、賢い選択なのだ。
もう、この物語は終わりだ。
ドラマもない。
でもそれでいい。
珍しい体験もした。
どんちゃん騒ぎや話題になる可能性もあったろうし、チャンスだったかもしれない。
しかし、僕はただ僕にできることで、人生を生きていきたい。
僕は、たんたんと彼女を月にお見送りして、次の仕事の準備を始めることにした。
こうしたことは、あとで「ああ、そういえばあんな奴もいたな」という小さなエピソードのひとつであり、それ以上でもそれ以下でも何ものでもない日常の一コマだ。




