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月から来た彼女。  作者: あだちゆう
4/6

月から来た少女、漫画を読みふけって寝る

「まったくどんだけまたせんの――――」


月から来た少女・つきみは、ソファでずっとココアを飲みながら叫んで、漫画を読みふけっている。


「あ、ちょっと面白いから待って待って。

あかん、漫画面白い、漫画面白い。

あかんわこれ。

あかん。

読みふけってしまう。

止まらへん。」


ソファに積み上げられた単行本は彼女の肩くらいまで高く積み上げられている。


彼女は、ひとりでげらげらわらったり、ページを無言でパラパラめくって止まる様子がない。


「あと一冊だけ、あと一冊だけで終わるから。」


そういいながら、もうはたしてどれだけ「あと一冊」が続いてきたのだろうか。


それは、なんというか、二年や三年くらいの長さのようにも思えた。


「地球サイコー!漫画よみにきたい!

地球で、漫画に埋もれていっしょうをすごしたいのであるよ、わたしは。」


「どんだけませんのーーーー、

はこっちのセリフだよ・・・」

とぼくはつぶやく。


「っていうか、つきみちゃん、いったいきみは何者で、どこからきて、ってああ、月か・・・いや、月とかそういうんじゃなくて、まあいいけれど、何をしに何のために来たんだ。

てか、いきなり、降ってきて、つきあえとか、なんなんだ、なんなんだ。」


「うるさい。

いまいいところなんだから、話しかけるのは後にして!」


つきみに怒られた。



姉ちゃんは、姉ちゃんで、ずっとお構いなしで、ネコとにゃーにゃ―お茶をはさんで会話をしているし、なんなんだよ。

ドラえもんとミーちゃんか。


もうなんなんだよ、この家族に、この・・・

あーーーもういいや。



・・・ていうか、このつきみちゃん、地球でなにも結局やんないまま、目的もあかさずに、そのまま月に帰ってしまうんじゃないかな・・・。


僕は、彼女の様子を見ていてそう思った。



そして、だいたいその予感というのは的中するものなのである。



そのまま、カフェのソファでつきみは寝落ちしてしまった。


姉ちゃんと僕は、そっと寝息を立てるつきみに毛布を掛けた。


仕方がないから、僕も近くのソファに毛布を持ってきて、寝ることにした。


翌朝起きると、つきみはまだスヤスヤと寝ていた。

「つきみちゃん、おはよう、朝だよ」

と声をかけると、

「あれ。ここどこ?

ああ、そうか地球か。」

と目を覚ました。


姉さんが、モーニングを準備してくれた。


つきみちゃんは、トーストとサラダをハムエッグを平らげて、アイスコーヒーを少し飲み、

「あ、すごく地球は楽しかったから、つきみはそろそろ帰ります。」


唐突にそういうので、僕は拍子抜けしてしまった。


「あらーそうかーーーつきみちゃん、ありがとうーーー!

いつでもまた泊まりに来てねーー。

漫画たくさんあるからね。」


と姉ちゃんはむべなく。




「えーーー、え、え、え、

その、ここに来た目的とか、付き合うっていう話は・・・」



「あ、ああー

そんなこともあったっけ。」


昨日の夜したばっかりなのに、彼女はすぐに忘れてしまった。


「あ、えっと、漫画、、、だけ読んで帰るの?

君にとっての地球は、漫画喫茶としての機能だけしかなかったってこと?」



「悪いか。」



「いや、悪いわけじゃないけれど・・・」



「地球は、お勉強するところです!」


唐突に声がひびいた。


つきみちゃんのパパの声だった。

「ぎゃーーー!パパーーーーー!」



「あ、あ、いろいろぜんぶつくった人っていうのは・・・

えっとああ、そうだよね!

地球は学ぶ場所です!」


僕は急にしっかりしなきゃという気持ちになった。


でも、別にこんな感じだったら、月にすぐに帰ってもらっても悪くはないと、

正直思った。





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