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月から来た彼女。  作者: あだちゆう
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不思議な少女

いつの間にか、星々の海は消えていて、いつもの満月の夜に戻っていた。

そして、不思議なことにさっき河にダイブしてずぶ濡れになったはずの服も飛び込む前と同じ状態だ。


・・・ほっとした。

ずぶ濡れになったまま夜道を歩くのはあまりにも嫌だ。



・・・さっきのは、夢だったのだろうか。


いや、夢じゃない。


あのツキミという名前の「自称・月から来た少女」がそこにいるわけだし。



・・・てか、ちょっとまて、

ちょっとまて、ちょっとまて・・・



僕は・・・あの・・・「付き合ってくれ」という質問に、




「はい」と・・・

答えてしまったわけで・・・




とすると、



ここにいる、不思議ちゃん女子がか・・・かのじょで、




僕は・・・リア充ってことになるのか!!???




顔が赤くなる。


ゆでガエルになった気分だ。





ありとあらゆる事態があまりにも唐突、かつ非現実的なので、心がなかなか追いついてこない。





「そ・・・それで、ツキミさん。

ありがとう。はじめまして。これからもよろしくお願いします。」



「うん。よろしゅうね。」


子どものような笑顔からは八重歯がのぞいている。



「それで、ツキミさんの、家ってどこかな?

会ったばかりでなんだけれども、もう夜だし。」


「ああ、月だよ。」


といって、空を指さす。



「それで・・・月は近いのかな?」


「384400キロくらいやね。」


「ちょっとそれは遠いねえ。お家までどれくらいかかんの?」


「歩いて行ったら、32年くらいやね。」


「ひええええ。

歩きじゃなくて、なにか、その乗り物とかないの?」


「ねえよ、そんなもん!

・・・月なあ、追い出されてん!」

悲しげな表情一つ見せず元気に言う。


「追い出された?

あれ?地球を救いにきたんじゃないの?

どういうこと?」


この、関西弁とロボットのような標準語を混ぜて話す月人不思議少女のことをどこまで信じればいいのか。


「それについてはおいおい話すわな。」



「じゃあ、帰る場所は、あるの?」


「ねえな!いきなりホームレスや!

今晩は、あの橋の下にでも寝よっか。」


と言って、ちょっと向こうにある大きな橋のほうを指さす。


「いやいや、この時間、若い女の子が一人で橋の下で寝てたら、明らかに危なすぎるよ。

それに地球ではね、警察というのがいて、補導されるよ。」


「ふーん、月だったらどこでも寝ようと思えばふわふわで快適に寝られんのになあ。」


月の表面なんてクレーターと白い石ころばかりじゃなかったっけ。


・・・うーん、これは関わると面倒くさいことになりそうだ。

警察にでも行って保護してもらったほうがいいな。

付き合うとかもうそういう話はなしで。



目の前を猫の家族が通りかかる。

続いて、イタチが現れては消えていく。


「猫にもイタチにも寝床があるのに、ツキミには枕するところもないんかあ。


うーん、ま、えっか。

この世界どこもかしこも、ツキミの家やし♪」



「いやいや、どれくらい前向きな考え方なの!?」


と思わずツッコミを入れる。


「あの・・・親御さんとかはいらっしゃるの?」

と聞くと、

急に彼女の目が輝く。


「あのね、ツキミのパパはね!色々全部つくった偉い人なんだよ!」


ふうん、なにか工場とかビルとかそんなところの社長さんでもやってるのかな。


「そうか、じゃあ、忙しいから連絡は取りづらいよね。」


「うん、すごく忙しい。

24時間365日休みなしなの。」


「社長、どれだけ自分に対してブラックなんだよ!」


「でも、会おうと思えばいつでも会えるよ!」


「ああ、じゃあ結構融通は利くんだね。よかった。」


「だったら、ちょっと迎えに来てもらえる?」


「それは、『時』が来てからやな。」


・・・もう、話が合わなくなってきた。






「おおい!どこに行ったー?

ヒナターーー!」


河川敷の土手の上から、姉ちゃんの声がする。


「アカリ姉ちゃん!こっちーー!」

手を振る。


姉ちゃんは大学生。学校の先生を目指して勉強中だ。


渡りに舟だ。

ほっとする。


「あれ、その子は?」

姉ちゃんの顔がほころぶ。


どう説明すればいいのか。

「この子がいきなり月から降ってきていきなり付き合えと言われたので、現在対応に困っています。」

なんて、どうして言えようか。



「どうも、アカリさん。

先ほど月からきました。ツキミです。」


ツキミさん?ちゃん?に先手を打たれた。



一瞬、姉ちゃんの顔が固まる。



「ぎゃっははははははは!

面白い子だねえ。


ひいひいい。


さすがは、ヒナタ!


私の弟だけあって、面白い子と付き合ってるのう!!」


大爆笑。



「この後どうする?


姉ちゃんの行きつけの喫茶店、まだ空いとるんだけど、一緒に来るか。」





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