彼女と僕。 僕と僕。
「あなたが、好き。いつまでも側にいて。そして、一緒にこの世界から消えていこう」彼女はそう僕に言った。
「うん…」僕は、中途半端に返事をした。
「約束だよ。絶対。」彼女は僕に微笑んだ。
「わかった。約束する」守れなもしない約束をする僕。バカだな。我ながら思う。
彼女は、年老いていった。彼女は、きっと 僕が 人間ではないことには 気づいていただろう。でも、なんにも言ってはこなかった。
彼女が、この世界から消えていくとき。僕に囁いた。
「あなたは、単純だね。」ニッコリと笑った彼女は、なんだか恐ろしかった。
僕は、よくわからず ただ黙っていた。
「私のお芝居に引っかかっちゃうんだもん…。悪魔ごときが、人間と恋ができると思ってるの? あなたみたいな、バケモノと人間が同じ時を共有できると思ってるの?」
彼女は 僕の心を傷つけるのが、楽しくて仕方が無いように 笑みを浮かべていく。
(やめろ。それ以上何も言うな。)
心の中では そう思いながらも 僕は 聞いてしまった。
「君はいったい何者なの?」
自分でも驚くような、淡々とした口調。上手く言えたことにホッとする。
「やっぱり、気づいてなかったんだ…。」
彼女は、僕を焦らすように 間をあけている。
「私はね…あなたとは、まるっきり反対の種族。 あなたみたいな 悪とは違う。わかる?」
僕は、なにも言えなかった。それは、きっと 彼女が何者かわかってしまったから。彼女の美しい声から これ以上聞きたくなかったから。
「天使。私は天使だよ。私の役目は、悪魔を 処分すること。」
(処分…。)その言葉が僕の中で こだまする。
「悪魔なんてさ、いない方がいいと思うの。」
楽しそうに、僕にいう。
(黙れ。それ以上いうな。黙れ黙れ黙れ。)
僕はもう、抑えきれなかった。優しい僕では、いられそうになかった。
(落ち着くんだ。)
ドキドキとしている、心臓に言い聞かせているが 効果はなかった。
『ねぇ。私が 変わってあげるよ。私なら彼女をボロボロにできる』
(ダメだ。君はでてきちゃダメだ。)
落ち着かなくては、こいつを出してはならない。
「あなたが、天国にいくことも可能だよ。天使の奴隷になっちゃうけどね…。まぁ、悪魔ごときが 天国にいけるだけ ありがたいと思わなくちゃね。」
(それ以上喋るな)
『黙らせよう』
僕の中の君が微笑んだ。手遅れだ。