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ぺらぺら

作者: 古縁なえ


 私にはよく喋る友人が居ます。決して頭の悪い子ではなく、むしろ普段は機転の利く怜悧な子です。ですが、彼女には可笑しな一面があるのも確かです。それが、これ。


「目の前に分かれ道が現れた時、私は常に楽そうな道を選択してきた」


 頻繁に支離滅裂な発言をするんです。別に人形型の喋る玩具だとかそう言う物じゃなくて、彼女はれっきとした霊長類ヒト科の生物です。だから、故障が原因でぐわんぐわん奇怪な挙動をしたりはしませんし、しつこいようですが、平時はクールで頭の切れる女性です。


「信号は青。心の信号は常に赤信号」


 以前は、その不意に発する一言一言に深い意味があるんじゃないかって考えた事もあるのですが。


「今日の天気は晴れ。うん、いい天気だわ」

「そうね。洗濯物がよく乾きそうね」

「私、花粉症なのよね。外干しすると色々と大変で」

「薬を飲めば楽になるって聞くけど?」

「確かに楽になるんだけど、私には効きすぎるみたい。極端に喉が乾いたり、眠くなったりするから、なるべく使わないようにしてるの」

「そう……ふぅ……」


「 独り言 って疲れるわね」


 この時ほど、他人のフリをしたかった事はありませんでした。その言動を私なりに解釈して「話がしたいなら、そう言ってくれると嬉しい」と伝えたら「別に話がしたいワケじゃない」と返ってきました。


 無意味なのだとしたら。もしかしたら、彼女は私の知らない所で巨大な闇――もとい、ストレスを抱えているのかも知れないと思うようになりました。


「ポテトチップス、薄味。砂の魔女、サンドウィッチ」


 頭の螺子が外れている場面しか紹介していないから解りづらいでしょうが、普段の彼女はとても良い子です。私の誕生日は12月の中盤なのですが、誕生日には大きな靴下をプレゼントしてくれました。


「サンタさん、来てくれるといいわね」


 ね、良い子でしょう? もし、彼女が悩んでいるのなら、力になりたいと私は思い、ついに彼女の深奥に踏み込む事を決めました。


「悩みがあるなら、話ぐらい聞くよ?」


 そう言った私に、彼女はきょとんとした顔を向けてきます。


「突然どうしたの?」


 彼女の突拍子のない発言についての私の考察を説明すると、彼女は淑やかに笑いました。


「それはただ、字数を稼いでるだけよ。厚みのある人生にしたいと思ってるの」


「なにそれ……」


 彼女は良く喋ります。


「せばだばまいねびょん」


 彼女の人生記は厚くなるでしょうが、その内容はきっとペラペラでしょう。

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